『洞口依子映画祭』@シネマヴェーラ渋谷 イベント・レポート
11月13日(金)

YORIKO
"25é anniversaire"

DOGUCHI
FILM FESTIVAL

@シネマヴェーラ渋谷 
2009/
11/13(金)
   
<上映作品>
『部屋 THE ROOM』
『ミカドロイド(ディレクターズカット版)』
+パイティティPV


<スペシャル・イベント>
『ウクレレ Paititi The Movie』
プレミアム上映
and...ミニ・ライヴ!!
トーク:原口智生監督
x 洞口依子
x 石田英範、ほか


『ウクレレ PAITITI THE MOVIE』。

日本にも、こんなにロックなウクレレの映画ができたんだなぁ。
いや、「世界にも」か!

『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』や『ギミー・シェルター』、『ロックンロール・スウィンドル』といった映画で、
エレクトリック・ギターがごく当たり前に登場したように、この映画にはウクレレがそこにあります。
そこで鳴ってないとちぐはぐに思えるくらい、自然にそこで鳴っています。

ミュージシャンと楽器のあいだに共犯関係とでも呼びたいくらい密接な結び付きがあって、
片方が「アロンジ、アロンゾ」と言えば、もう片割れが「アロンジ、アロンゾ」と答える。
そんな呼吸にも似たやり取りが両者のあいだに見えます。
人が楽器を鳴らして、楽器が人を鳴らしている。

それは洞口依子という人の人生において、でもあるし、
彼女を見守り彼女とともに音を作り、
ときに彼女なしでセッションを繰り広げる仲間たちにとって、でもあって、
それはうらやましいくらいの共犯者たちの姿です。

パイティティには、ノイズがある。
と私は思います。
べつに阿鼻叫喚にわめいたり、金属片をドリルで穴を開けて出す必要はない。
道を歩けば誰だって足元からノイズをたてるし、なにかにぶつかれば音がする。
摩擦のあるところにはノイズが鳴っている。

「きれい」とされるものは、ときにこのノイズを除去された形で世に出ることがあるけれど、
本当に人の心をかき乱す美しさは、どこかにノイズを含んでいるんじゃないだろうか。

この映画には、ライヴでのあまり格好のよくないハプニングがブックエンドの様で登場します。
初めての映画で、ミュージシャンとしたら使われたくない気持ちもあるかもしれないけれど、
原口智生監督にとって、これはパイティティの素敵さを描くために、
そしてウクレレという小さな斧が巨木に打ち込まれる姿をとらえるために、
どうしても除去したくなかった「ノイズ」の一つなのだと思います。

この作品の中に映るウクレレは、ほんとうに小さい。
その小さなウクレレのネックに貝殻を当ててスライド・ソロをとる依子さんや、
これを胸に抱えて、レノンのように男気のあるバッキングを聞かせる石田画伯を見ていると、
何度も胸に熱いものがこみあげてきます。

洞口依子さんをデビュー作や『ニンゲン合格』で歌わせた黒沢清監督の
「そうか、彼女は(パイティティで)歌ったのか」という言葉、
サザンオールスターズの関口和之さんが、彼女の誕生日に贈った1本のウクレレと、
そこから始まったパイティティの初期を語る言葉、
巻上公一さんのつかみどころのない口調に暗に響く、東京ニューウェイヴのスピリット、
そんなインタビューがライヴとPVのあいだに挿まれ、
當間早志監督の言葉が、『マクガフィン』という映画を通じて
依子さんと石田画伯に贈ったステップボードの大きさを印象づけます。

病で大切なものを失った人間のどん底での悲嘆は、そこだけが強調されることはなく、
でもたしかに、桃源郷に向けてのそこからの再出発が描かれるとき、
小さなウクレレの音は飛行機になって、それぞれの思いを乗せて飛び立つ。
ここで登場する「パイティティ・エアラインズのテーマ」PVのくだけたユーモアとパヤパヤは、とても力強い讃歌です。

だから音楽を選んだんだ、だからウクレレを手に取ったんだ、だからパイティティでやるんだ、と言えるものを、
映画はときに照れ笑いを浮かべながらも、まっすぐに語りかけてきます。
それは原口監督にとっての、だからパイティティの映画を撮るんだ、と言えるものではないでしょうか。

ひょっとしたら、作っている人の誰もそう意識していなかったかもしれないけれど、
いや、だからこそ、これはロックの映画です。
この映画を見てウクレレを手にした人が鳴らす明日の音が早く聴きたい。

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