『スタジオパークからこんにちは ゲスト・ 洞口依子(1995年6月20日)』(1995)

1995年6月20日、洞口依子さんがゲストの『スタジオパークからこんにちは』。
およそ2週間前の6/4に『
』のオンエアが始まり、5日前の6/15に『世界ウルルン滞在記』があった。

スタジオでは季節の花であり、そして依子さんのリクエストでもある紫陽花が出迎え、
依子さんは目にもあでやかな輝黄色のチャイナ服に身を包んでの出演。
そしてこの装いがこの日の番組の第2のテーマともなる漢詩とつながってゆく。

『スタジオパーク〜』はNHKの番組であり、ここでもまずは『蔵』についての話題が取り上げられる
(松たか子さんが「松本幸四郎さんのお嬢さんの」と説明されているあたりに、1995年を感じる)。
『蔵』での洞口依子さんは、ファンの間でもドラマの代表作に挙げられることが多いが、
ここでの依子さんは自分の演技に対する手ごたえは直接語っていない。
たが、「(『蔵』の映画版、ラジオドラマ版と比べても)今回のドラマがいちばんです!」と言い切る笑顔からは、
番組の宣伝以上のものが伝わってくるし、なによりこの作品への彼女の思いが表れている。

同作品での自分の場面がハイライトで紹介されるのを見ながら、思わず吹き出したりしている表情もまたいい。
彼女は15年後の2010年に『激恋・・・運命のラブストーリー・・・』のスタートを受けて『スタジオパーク〜』に出演しているここ
その回では、壮絶な夫婦喧嘩を演じるシーンを見て涙ぐんでしまっていた。
一瞬の表情なのだけど、そんな無防備とも言いたくなるほどの素直で飾らない反応が見る者の心をハートの形にしてしまう。
そう思って和んでいると、多くの人が感情移入しながら見ていたであろう『蔵』でのせき役について、
「自分とあまりにかけ離れたキャラクターなので、その距離感が良かった」と、すーっとすり抜けていくかのようなシュプールが小気味いい。

話題は『世界ウルルン滞在記』で訪れたヒマラヤの話題、そして依子さんがNHKのラジオ講座を聞いていた漢詩に移る。
蘇軾(そしょく)という11世紀の詩人のことは、1985年の『朝日ジャーナル』誌のインタビューでも出てきた。
私も、そのインタビューで初めておぼえたその名前を、請け売りの分際で知ったかぶって友人に高説垂れたりしたものだが、
自然体で吸収していた彼女とは、むろん比べるべくもない。そんなことを思ったりした。

途中、「少女のあどけなさを感じさせたかと思うと、大人の女の魔性を見せる」など、新聞や雑誌で書かれた彼女への評価が紹介される。
まだインターネットも盛んではなかったこの頃に、活字に印刷されて発行されていたこれらの言葉をいま聞くと、じんわりと胸が熱くなってくる。
たぶん、この日、この番組を見ていたファンはみんなそう思っていたはずだ。

このほかにも、依子さんは田中裕子さんや加藤治子さんの素晴らしさを目を輝かせて語ったり、
実質40分ほどのあいだに「洞口依子」が多面的に輝いている。そしてそんな乱反射が収束してゆく一点がある。
それは、この回での(たとえば)漢詩の話と、15年後に着物でウクレレを弾き踊る(!)彼女とを時間を超えて結ぶものかもしれない、
などといった能書きはやめよう。
現在、NHKの局内で視聴できる番組にはないようだが、ぜひリストに加えてほしい。

1995年6月20日13:05〜13:55 NHK総合にて放送


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