『世界ウルルン滞在記 洞口依子がエベレストに出会った』(1995)

1995年。
どんなことがあった年でしょうか、と投げかけるまでもなく、
多くのかたがすぐに思い出せるのが地下鉄サリン事件。
95ってくらいですから、WINDOWS95のブーム。
NTTのテレホーダイも、それがらみ。
この年の流行語の何位かに、「インターネット」が入ってます。
ヒットチャートは小室系。
年末にはビートルズのFree As A Birdなんてのも、ありました。

この年、洞口依子さんは、ヒマラヤ山脈の標高3790mにあるクムジュン村で、
シェルパ族の家族のもとでホームステイを体験しています。
それがこの『ウルルン』です。

空港に降り立った依子さん、白地に世界地図をあしらった長袖シャツに、ユーモアとやる気が覗えます。
富士山にも登ったことがないとのことなので、それなりに覚悟はしてきたのでしょうが、
「思ったほど苦しくない」が最初の感想。
出迎えたステイ先の家族にスーツケース2個を(楽々と)背負ってもらって、
さらに1時間の山道を歩いて登ります。

依子さんの小学校のときの先生が、エベレストに登った初の女性チームにいらっしゃったそうで、
ぜひそのエベレストを見たいとの期待を胸にやって来たようですが、あいにく遠くまでは見渡せません。

ネパールの高山地帯に生息するヤクというウシ科の家畜を飼っている、土壁作りの素朴な家に案内されます。
電気は4ヶ月前に敷かれましたが、ガスや水道は通っていません。
依子さんに与えられた棟は、階下がヤクの小屋になっています。
ネパールの豆料理、ダルスープがふるまわれる夕食どき、依子さんが驚くことが起きます。
さて、それはなんでしょうか。
三宅さんや石坂さんになって、考えてみてください。徳光さんは、こちらの答え1 をご覧ください。

翌朝、一家の嫁たちとともに、水汲みの仕事に出かけます。
女性たちは、一人あたり20リットルのポリタンクを紐でなんとオデコから後ろに垂らして、担いで30分の山道を行くのです。
赤と黒の民族衣装に身を包んだ(似合ってる!)依子さんも5リットル担ぎます。
それでも当然くたくたになるわけですが、休憩のときも、座ってはいけません。立てなくなるからです。
しかし、どうしても腰かけてしまう依子さん。

戻って倒れるまもなく、ご飯の用意です。
ここでの主食は芋。すりつぶして薄くのばし、クルトウと呼ばれるパンケーキを作ります。
「おいしい!」と目を輝かせる依子さん。
女優さんでも、本当においしいときには目の輝きに出るようですね。

2時間の山道を、ナムチェという山間の村のバザールへ、買出しに出かけます。
羊の乾し肉や砂糖など、一週間ぶんの必需品をまとめ買いするので、これまた大変な行軍です。
さすがに疲労の色を隠せない依子さんですが、バザールに着いたとたん、好奇心が頭をもたげます。
瓶入りのコーラを売っていたりして、気圧の関係で量が半分に減っているのがすごい。

ヤクから絞る乳を使って、バターを作ります。
まるで傘立てのように縦長の木製のバターメイカーで、丁寧に捏ねてゆきます。
このバターは、食用以外に、壁に塊りを塗って家内安全のまじないに使ったり、
灯明用のローソクの材料に用いたりします。
ほかには、リンドクセンという、これも芋をすりつぶして作った餅状の食べ物があり、
噛まずに飲み込むと長寿に効くそうですが、なかなか飲み込めません。

この一家のお父さんは、若い頃、山岳ガイドで働いていたそうで、植村直巳さんにも協力したとのこと。
さて、ここで問題です。
植村さんたちが下山する際、あるものを置き土産に残し、それが村の生活でなくてはならないものになりました。
それはなんでしょうか。
答え2 はこちら。

村を去る前夜、シェルパ・ダンスと呼ばれる、皆で腕をつなぐフォーク・ダンスのようなおどりに参加する依子さん。
「踊ってみて、ようやくここが高山だと思い出した」と息が切れています。

そして出発の朝。
旅立つ人への祈りをこめた白い布を首に巻いてもらい、依子さんもお母さんもウルルンです。
荷物を担いで山道をたくましく登っていたあのお母さんの目に涙。
「また来るね!って言っても、そう簡単に来れないんだよね・・・」
身もふたもない言葉ですが、なぜかこの場では心に響きます。

天気は相変わらずいま一歩の晴れ具合で、エベレストは見渡せません。
「でも、いいよ。みんなに会えたから」

お父さんが、サラリと別れのあいさつ。それが堪えるのか、機上の人となってもまだ涙が止まらない。
と、飛行機の窓から、ようやくエベレストが見えた!

というわけで、スタジオに登場した依子さんは、木製のバターメイカーをおみやげに持参し、
「ちっぽけな自分が、あのヒマラヤの大地のゆりかごに包まれているような気がした。
生まれてきてよかったと思いました」と振り返るのでした。

かなりの体験だったはずですが、依子さんの場合、もう一歩も歩けないくらいにくたびれていても、
なにか好奇心をそそるものが目に飛びこんでくると、急に回復するみたいですね。
それが如実にあらわれた番組です。
それと、このネパールにかぎらず、アジアの民族衣装は、おおむね似合うのだなと思いました。
あと、たぶんブルガリアなどの服も、反則的なまでに似合うんだろうなぁ。


1995年6月15日22:00
TBS系列にて放送

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