『天使が消えていく』(2010)


「夏樹静子作家生活40周年記念」と銘打っての作品。
ある街のビジネスホテルで私立探偵が殺され、その男と同伴していたホステス志保(京野ことみ)に嫌疑がかかる。
さらに、そのホテルのオーナーである資産家・蟻川(長門裕之)が毒殺され、志保もまた変死をとげる。
記者の亜紀子(賀来千賀子)は志保の難病を抱える乳児を取材中、その育児放棄ぶりを見てきたことから、
志保が自殺を選んだことに疑問を抱く。

脚本は坂上かつえさんで、演出は内片 輝さんがあたっている。
洞口依子さんの出演作では『刑事殺し 完結編』がこのコムビによるもので、
刑事の立ち姿のシルエットを生かした落ち着いた画面作りはここでもスタイリッシュな印象を残す。

依子さんの役は資産家の妻・梨絵。
夫にかしずく良家の奥方という出で立ちながら、襟首からのぞかせたうなじは、「妖婦」と呼びたいくらいの疑わしい気配。
前妻の娘とその夫(前田耕陽)が金の無心に来たのを冷たくあしらう段なども、上品さの下に潜ませる刃を抜くよう。
長門さんと2人の手の重ね合いも口当たりのしつこさが絵になる。

この原作は73年に日色ともゑさんが亜紀子、太地喜和子さんが志保を演じて一度ドラマ化されたことがあるらしい。
今回のキャスティングには、そこから40年弱で若いシングル・マザー像が大きく変化していることを思わせる。
いっぽうで、「資産家とその財産目当ての若い後妻」という、より現代的にアレンジできそうな設定をそのまま残し、
長門さんと依子さんの俳優の魅力で見せてくれているのが嬉しい。

また、余談だが、前田耕陽さんと依子さんとの共演場面があるのが『勝手にしやがれ!!』シリーズの大ファンにとっての楽しみ。
(『おでん屋ぽんた』という作品もあった)


2010年10月30日21:00〜22:54 テレビ朝日「土曜ワイド劇場」にて放送
内片輝 演出
夏樹静子 原作
坂上かつえ 脚本

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