パイティティのつくりかたpart2
part 1 はこっち    part 3はこっち


-2008年2月2日、パイティティのアルバム・レコーディング現場を潜入レポート-


part2 


ファルコン登場。
例によって、言葉少なに(というより、画伯+ヨーリー+私がよくしゃべる)荷物を置き、
お菓子のテーブルへ向かうと、私が土産に持参した生八橋を見て、
「…あ、これ…」
代名詞のみをつぶやくだけなのだけど、そこにまぼろしの目的語や述語が響くという、
発語の倍音効果がうらやましい。

さっと荷物を開けて、取り出したのがこれ。
サザンの関口さんからお借りしているという、ウクレレ・ベース。



この弦は…?
ファルコン「ゴム製なんですよ」
ゴムとなると、ペグはかなり強化されてるとか?(ネックの裏を見せてもらう)
ファルコン「…いや、ふつうに」
ギヤ式にはなっているものの(そりゃそうだろう)、とくに変哲はない。
ファルコン「だから、チューニングがめんどうなんですよ」
ただでさえチューニングを頻繁にする楽器なのにね。
ファルコン「しかもフレットレスで」
おおっ、「ドナ・リー」とか、やったりして?むよ〜ん、って。
ファルコン「ははは」
できます?
ファルコン「…」
……
ファルコン「…無理です(笑)」
……(笑)
ファルコン「…」




今回のセッションを見学した感じだと、石田画伯のプロデュースは、
まずミュージシャンの自主的なノリとフレーズを引き出して、
それを少しずつ理想の形に近づけてゆく方法みたいです。

ここでファルコンがダビングするのは、以前聞かせていただいたことのある曲なのですが、
マーチ風というか、ブラスバンド風味のリズムがついており、
ベースもそこに寄り添った音で弾き始めます。
それが徐々に、R&B色が加わったり、もっとしなやかにうねる部分ができたり、
やがては、私の耳にはほんのりニューオーリンズ魂も感じさせたりするまでに変わっていきます。

なお、ふたりの会話は、とくに難しい専門用語を使うことなく、
「そこ、もっとガ〜ッと」「そこ、キューン、キューンね」「クッ、クッって感じ」
こんなふうでした。
でも、おそらく、画伯が全体のリズムまで頭で鳴らしているのと、
仲間のファルコンのリズムが体に入っているので、
どこをどんなふうに表現すればいいのか、自然とそういう言葉が出てきて、
さらにきっとそれで通じるのでしょう。



ファルコンは相当耳のいいミュージシャンなのでしょう、
ウクレレ・ベースのチューニングが気になるようです。
あまりピッチを気にしすぎるとグルーヴが物足りなくなるのだろうし、
耳のいい人も大変です。

パイティティで演奏するの、どうですか?
ファルコン「いやぁ、勉強になりますよ。ははは」
どういう勉強になりますか
ファルコン「うーん、遊びごころ」
おっ、名言かも。いろんなジャンルの勉強になる、とか以上に?
ファルコン「そうですね。遊びごころが」
アメリカン・ロックも好きなの?ザ・バンドとか。
ファルコン「あぁ、好きですよ。高校のころ、『キング・ハーヴェスト』とか」
やってることはちがうんだけど、パイティティに、ザ・バンドと通じるものを感じるんですよ
…って、高校のとき?「キング・ハーヴェスト」を?
ファルコン「はい。ま、『ザ・ウェイト』とかも」
へぇっ、高校生でザ・バンド聴いて、「なんだ、このジジ臭い音楽は」とか、思いませんでした?
ファルコン「う〜ん、けっこう雑食なんですよ。だから」

うぅむ、コードネームはファルコン。
次にお会いするときは、もう少し突っ込んだインタビューさせてください。

(この画像のタイトルはfalcon alone。こういうの、たまらないって人、いるよね!)

石田画伯は、基本的に外交的になれる人で、ここでも私にいろいろと話しかけてくれるのですが、
今回ばかりは頭の中で音が鳴り響きっぱなしのようで、
体半分、心9割くらい、画伯を待っている「音」の詰まったPCに引っ張られているようです。

これが、今回の画伯の基本形。
わかりますねぇ。飯も食わずにプラモ組み立ててる図ですよね。
そしてこの、自分のお気に入りのブツに埋もれてる幸福感。
どんな絶世の美女にも金銀財宝にも勝てない瞬間の塊りに浸る。
じつに正しく「男の子」であります。
かっこいい。

私もまた、そんな素晴らしい時間のすぐ近くまでたどり着いてるのですが、
残念なことに、非常に残念なことに、
それ以上に素晴らしい美女のそばに居合わせてしまってます。駄目な僕。



依子さんには、このところずっと「洞口日和」をほめていただいており、
この場でもいっぱい話題にしていただきました。
私も、サイト管理で起きたいろいろなことを聞いてもらいました。
また、20代の女の子が依子さんについてBUBKAに書いたコラムをコピーして進呈し、
このところ、若い洞口依子ファンが増えている、という話をしました。


ファルコンのベース録りがひと段落したところで、画伯と依子さんに招かれた私。
ハンドクラップ(手拍子)を録音したいので、参加して、ということでした。
急遽、マイク・スタンドの前にヘッドフォンをして、依子さんとファルコンと並び、
プレイバックに合わせて手拍子を叩きました。
これも、どこでどのくらいか、まったく指示なし。
「ここがいいんじゃない、というところで、叩きたいように」とのこと。
とりあえず、音量などの調整に、軽く。このあと薫さんが来たら、本番です。



(つづく。さぁ、いよいよ次は「デヴィッド・ボウイに勝った男」薫さんの登場だ!)


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