パイティティのつくりかた part1



-2008年2月2日、パイティティのアルバム・レコーディング現場を潜入レポート-

part1 

パイティティがミニ・アルバム「マクガフィン」をリリースしたのが2007年の3月。
アルバム制作の意気込みを画伯にうかがったのが夏。
画伯にデモ段階の音源を聞かせていただいたのが秋。
スタジオ入りの具体的な予定を耳にしたのが年末。
まるで屋上の展望台をめざしてフロアを一階ずつ上るように、
アルバム制作への動きは進んでいたわけで、その気持ちはファンも同様。
ついにレコーディングとあっては、雨が降ろうが雪が降ろうが、
駆けつけないわけにはいきません。

と思ってたら、本当に雨が降って大雪になったこの日の東京。
途中の日本アルプス(高速バスで行ったのです)も雪を頂いていました。

スタジオのドアを開けてくれた石田画伯の顔にも雪が?と思ったら、それはマスク。
「あらら、風邪ひいちゃったんですか?」
「そお。でもこのマスクは、むしろ、他の人にうつさないように」
熱はない、と話す画伯なのですが、全身から、風邪とはベツクチの、
うなされるような放熱を感じます。
レコーディング・ルームには、画伯のほかに洞口依子さんがいるのみ。
ヘッドフォンをしてウクレレをつまびきながら、
ふふふっ、とこぼれそうな笑みを向けます。


広いスタジオです。
小ぶりの体育館。
ボウリングのレーンがいくつかスッポリ納まって、
おまけに貸し靴カウンターにビリヤードのコーナーもついてきそうなほどのスペースです。
このだだっ広いスタジオに、なぜか肩を寄せ合うように、
壁ぎわにあつらえられたドラム・セットとマイク・スタンドとPCのコンソール。
隅のほうにはお菓子類のテーブルとソファ。
苺の主張が目立っています。


「この広い空間で、なんで私たちは真ん中にいないわけ?」笑いながら、
依子さんがマイクの前に移動し、「ウクレレ・ランデヴー」の歌入れが始まりました。


(スタジオのマイク。)

ライヴでもおなじみになった曲ですが、まったく表情を変えて、とろけるような囁きで歌いきる依子さん。
何度か聞いた曲ではあるのだけど、今まで、ランデヴーを楽しむふたりの姿が思い浮かんだのが、
いまは恋人に誘いかけるニュアンスがより強まって聞こえる。
何度もテイクを重ねたのは、途中出てくる依子さんのセリフというか色っぽい語りの部分。
声のトーンを高くしたり、酔っ払ったようなニュアンスで、とか
画伯から提案が出るごとに依子さんが演じてゆく。
だんだん、画伯自身がそれらの語りを演じてみせたりするのが猛烈におかしいのだけど、
この場の画伯は、やっぱりなにか熱量がちがう。
PCをにらみながら、プレイバックを聞き、アイデアを継ぐたびにどんどん気持ちが昂ぶっています。

(ブライアン・ウィルソンにこんな写真がありませんでしたっけ)

「いまの、もうちょっとめんどくさそうに」
「今度は、少しあぶない感じで」
矢継ぎ早に、画伯からアイデアが飛び出します。
そしてそれを間髪おかずに形にあらわす依子さん。
声や表情や細かいしぐさを変えていくさまを、目の前で見学するぜいたくさを味わいました。


演技とはちがった、ユニークなシチュエイションで表現する面白さを満喫しているようでした。
画伯のつける色合いを、洞口依子としてどう際立たせたりにじませたりしていくかを楽しんでいる。
じつにいきいきとした呼吸がやりとりされて、立ち会っているだけで心地がよかったです。
このパイティティでの活動が、依子さんにどれだけプラスとなっているかが、わかるような気がしました。


そして休憩になると、部屋の中をウォーキングしたり


鏡の自分に驚いたり、


まるで猫。
あぁ、この人、ホントに可愛いひとなんだ、とつくづく思うのでした。

(と、ミュージック・ライフばりのミーハーなノリのまま、つづく)

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