『パイナップル・ツアーズ/ 爆弾小僧』(1992)
この作品は『洞口依子映画祭』で上映されます!
(当サイトは洞口依子さんのファンサイトです。
このページは、作品中の依子さんについて語るもので、
作品自体についてではありません)
依子さんが登場するエピソードは當間早志監督の第3話「爆弾小僧」です。
なんと言っても、このときの當間早志監督、藤木勇人さん、津波信一さんらとの出会いが、
やがてカムバック作『マクガフィン
』へとつながって行くわけですから、
いわば彼女と沖縄との関わりの端緒と言っていいでしょう。
彼女の役、スギモトは、この島に東京からやってきたいわゆる「ディヴェロッパー」です。
島をリゾート化するため、どこかに埋まっているはずの不発弾を探すべく、
発見に一億円の懸賞をかけて大々的に企業をアピールしたりもする人物。
ロンドンでの音楽活動を夢見るパンク・コンビ「爆弾小僧」に、
東京ではあなたたちの野蛮人みたいなエネルギーのある音楽は受けるはず、
ワールド・ミュージックが流行してるから、などとデビューを持ちかけます。
90年代初頭のワールド・ミュージック人気の「痛いところ」を衝いてますね。
ただ、彼女に本土を象徴させて異議を申し立てる、という単純な発想でないのがこの話の特徴で、
むしろ彼女にあっさりと翻弄されてしまう人々の姿に、そしてロンドンロンドンと騒いでいる爆弾小僧にも、
滑稽ですらあるおかし味と、突き放した視線を感じます。
醒めたユーモアの感覚だと思う。
その感覚が依子さんの登場のしかたにもあると思いますし、
なにより彼女の周りの空気の薄さが、土地の人々とあまりに違うのもおもしろいです。
コミュニティーになじまない、溶け込まないよそ者を演じると、洞口依子という女優はほんとに美しい。
彼女が 周囲の風土や人々から浮いているとき、距離を置いているとき、平穏な風景に不全感が生じます。
保たれているはずのバランスが、何度も失われそうになる。
現在、依子さんが沖縄に滞在している時のリラックスした表情を見聞きして、
実際にかの地でそれを目の当たりにしたりすると、この「爆弾小僧」での彼女には戸惑いすらおぼえます。
ですが、スギモトの役は、浮いていて正解なんですね。
土地に同化しない人間があの中にいて、フロントグラスのない車の前面から海に落ちる呆気なさまで、
周りで交わされる笑顔や雄叫びや爆竹の音から遠いところに彼女がいることが、重要なのだと思います。
なお、當間早志監督に洞口依子さんを語っていただいたインタビューをお読みいただくと、
この距離感についていろいろ興味深い感慨が得られるかと思います。
いや、そんなことより、洞口依子さんについて語られた談話でも、これは出色のものだと思います。
ぜひ、お読みください。→ここ
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