『おだまりコンビ(3)芸能界殺しのオルゴール』(2000)

一発屋の演歌歌手・岬倫太郎(美川憲一)と元女優の辣腕マネージャー(加賀まりこ)が
芸能界を舞台に繰り広げるコミカルな推理サスペンスの3作め。

古い歌手仲間(加納竜)の死に疑問を抱いた2人が、謎を追って伊香保へ赴くのが、今回のストーリー。
このコンビが楽屋オチやコスプレを交えながら、事件解決に向けて横車を押してゆく様子だけでも
食いだおれしそうなほどの満腹感がある。

洞口依子さんの役は、主人公の「おだまりコンビ」行きつけのバー「黒船」のママ。
登場した瞬間から重要参考人の匂いを漂わせるけれども、
再起に賭ける女性歌手(山口美也子)、旅館の支配人(!山田辰夫)らが入り組んで絡み、
なかなか真犯人が読めない。
また、犯行の再現シーンでは、洞口、山田、山口の3者が入れ替わり立ち替わり現れ、
その顔ぶれで日本映画のファンを喜ばせてくれる。

依子さんは途中から姉の役としても登場。
最初は遺影の中だけの二役かと思いきや、終盤の回想場面では妹と性格の異なる姉を実際に演じている。
ストーリー上、20代と思われるこの姉の場面では、男に接する言葉も態度も、妹を演じる時より直情的。
本当に20歳若返ったかのような幼い雰囲気を発していて、『あげまん』や『雀色時』の頃を思わせる横顔が見られて、
ハッとさせられる。
そのため、短めながらも後に残るのはこの姉の印象のほうが強いけれど、
2つの役の顔のアップが、姉から妹へ、「宵待ち草」と「帰らざる河」の歌に導かれるように繋がってゆくのは良かった。

『監察医藪野善次郎』では見られなかった、加賀さんとの共演場面があるという点もぜひ書いておきたい。


2000年10月6日(金) 21:00〜22:52 フジテレビ「金曜エンタテイメント」にて放送
南千尋 脚本
大井利夫 演出


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