『示談交渉人甚内たま子裏ファイル(5)』(2007)

シリーズも、5本目を数えます。

このシリーズ、ヨーリー・マニアとしては、毎回どこで立木さんが登場するかが最初の興味となります。
まず十中八九は、たま子さんが1人もしくは相棒(今回は宇梶剛士さん)と一緒に「現場検証」をしているとき、
偶然その事故の相手方に付いて現れる、というパターンです。
この5作目では、これがなかなか登場せず、20分くらいになって、ようやくさりげなく姿を見せます。
たま子さんが聞き込みにまわった会社で、タンク・ローリーの傷の損傷を確認しているところにバッタリ。
このさりげなさが逆に「おなじみ」感を醸しだし、視聴者は、さも自分がこのシリーズの事情通であるかのように、
まるでお得意さんとしてもてなされている気分になるんですね。

たま子さんと立木さんの関係は、決して険悪なものではありません。
ライバルではあるけど、お互いに節度をわきまえている。
立木さんも、とくに今回は、なにがなんでも相手を出し抜こうという意気込みでもないです。
彼女はべつに意地悪な人というのではなく、自分の仕事と会社に誇りを持ってるんですよね。
熱意という点では、たま子さんに引けをとらない。
大切な事実を隠している自分のお客に、たま子さん側に有利になるかもしれないその事実を聞き出す場面、
喫茶店のシーンですが、けっこう魅せられちゃいますよね。

渡辺えり子さんって、登場すると、その場に出ている役者を、「渡辺えり子と、そうじゃない人々」に塗り分けてしまう。
依子さんと並ぶと、この塗り分けの自然さが増幅されますね。だってあまりに違いがはっきりしてるもん。
今回、重要な鍵を握るのが、被害者の嫁、高橋かおりさんです。
彼女は、単独でいても、どこか依子さんに通ずる顔立ちなんですね。
彼女が渡辺えり子さんと並ぶと、「渡辺えり子と、そうじゃない人々の中でも洞口依子に近い人」の絵ができあがります。
これがおもしろい。
実際の出番以上に、この作品の洞口依子濃度が高まっているような気がするのです。

私、よっぽど特殊な楽しみかたを心得ている人間なんでしょうか。


(シリーズ6作目はこちら

「この人を見よ!」へ戻る

←Home