Happiness Is A Cup Of  Hot Wine (2008年4月9日 「子宮会議は踊る@代々木公園」)




会議はとつぜん開かれる。
これまで洞口日和がフォローしたイベントの中でも、うてな喫茶でのリーディング・セッション の10日という記録を破る、
実質1週間の告知/準備期間で開かれたのが、2008年4月9日、代々木公園での今回の
「子宮会議は踊る@代々木公園」でした。

なにかもう、会議というより、「ゲリラ作戦本営」。

この企みをこっそり教えていただいたとき、夜空の下で、ファルコンのギターとヨーリーの朗読が響き、
さらにプラハさんのあの妖艶な舞が加わるのなら、成功まちがいなし、と信じる気持ちが6割。
あとの4割は、平日の夜7時から、火気厳禁の公園で、しかもまだ肌寒い4月の気候で、
何人集まるのか、そして何人を温めることができるのか、という不安でした。

けれども、毎度のこととはいえ、
「見るまえに跳んじゃえばいいじゃん」
の洞口依子的なるものに、思春期のころから、魂の暖炉に火をくべてもらってきた私。
今回はそれが「見るまえに踊ろう」の切実な叫びになって、依子さんの言葉の端々にこだまして、
またしても、新幹線に飛び乗って東海道をぶっとばしてまいりました。

代々木公園。
日が暮れて、人影もまばらになり、点在する街灯の光だけでは、すれ違う人の表情すら読めない薄闇。
その池のほとりに陣取って、荷物番をしながら地面を掃除していると、だんだん心細くなってきます。
辺りには、花見の宴のあとと思しき細かな屑が、量は多くないぶんよけいに目だって見えます。
依子さんはこの日はお昼にマスコミ向けのリーディング・セッションもあり、
本当にギリギリまで準備に時間をやりくりしていました。
前日は雨。翌日も雨という天気の谷間でもあり、なにより4/9で「子宮の日」でもあるということで、
どうしてもこの日に行いたいという熱意が、依子さんを動かしていました。

3畳ぶんのビニールシートを3枚つなげ、スペースを設け終わるころ、
6時半をまわったぐらいから、少しずつ、手探りの手づたいのように、人が集まってきました。
持ち寄られたお酒や食べ物で、用意されたテーブルが埋まっていきます。
冷えるといけないので、いも焼酎なども振舞われ、座もぬくまっていく様子。
そして依子さんが姿を見せた7時半すぎには、スムーズに、会議が始まりました。

2個のアンプに楽器とマイクをセッティングして、リーディング・セッションの始まり。
日は落ちきって、池を背に爪弾かれるギターが、水と空と木立に反響して、
特にカッティングのアタック音が、前後左右、そして上下から降りそそぐかのようです。
これまで室内でしか聞いたことがなかったリーディング・セッション。
まるで、読みなれた一冊の本を久しぶりに開いたかのように、
言葉が、わっと活字の世界から飛び出してきます。


とても不思議です。20人以上の人間が集まって、同じ言葉に、音に耳を傾けているのに、
それぞれを包む暗闇の薄い膜が、それぞれの個人的な世界を隔てている。
そしてそれがバラバラにならずに、1人の演奏者と1人の読み手によって、結ばれている。
みんなが1人で、みんながそれぞれの暗がりに包まれているのだけど、ランタンの小さな灯りが見えている。
その灯りはもちろん、朗読される文字も、ギターのフレットも照らしている。
この野外の空気と静寂が媒介になって、それが言葉と同じくらいに伝わってきます。

あまりにも多くの層を成す思いが響く実感があったからでしょうか、この日のリーディングは、ここまででした。
依子さんは、本を置いて、この日ブログを見て来てくれた人たちに向き合って座り、話をはじめました。
そしてまだ(かなり)若いハープ(ハモニカ)プレイヤーとファルコンのセッション。
こういう組み合わせのセッションをどのくらい経験したのか、ファルコンに聞き忘れたのですが、
いつもとちがう彼の演奏の表情がおもしろい。
ハープとギターが、お互いにリズムを導く役を譲り合いながら、
ところどころで絡まるようにダンゴになったり、数歩先に出た相手を追っかけたり、
要するに、
「若いのにどこでそんなことをおぼえてきたんだ!」と言いたくなるプレイヤーが、
2人でセッションしているわけです。
そのへんの太刀先の見切りが、どこまで意識しているかはわからないですが、
ぞんぶんに妄想させてくれました。


この日、依子さんがもっとも準備と実践方法に手間どっていたのが、ホットワイン。
そのレシピについてはまた伝授いただくとして。

出来たてのホット・ワインは無上の喜び。

この夜、時間とともに冷えてきた手足をあたためてくれたのがこれでした。

そして、あったまった体をさらにホットにしてくれたのが、やはり、このかた。
ベリーダンサーのプラハさんだったのですね。
残念ながら東京在住ではない私は、彼女の単独のライヴを見たことはないのですが、
それでもすでに3〜4回のゲスト出演を見ているなかで、この夜は最高でしたね。
3人のお友達も参加しての、初の野外プラハ。


すごかった〜
踊っていることがこんなに自由を感じさせる人を、初めて見ました。
興奮して、「カッコえぇぞ!」と叫んでしまいました。
パーカッションの薫さんのほかにもいつのまにか増えていたミュージシャン・チーム、
とくにフルートのからみつく蛇のような音色もすごくて、
あれはたぶん、プラハさん、音に踊らされていた面が強かったんじゃないでしょうか。
依子さんもこの夜のプラハさんを絶賛していましたね。
この夜、あいにく桜も月も私たちにはなかったけれど、プラハさんたちの踊りはそれ以上の恵みでした。
 


この日の翌日、4月10日は、薫さんのお誕生日でした!
24歳らしいです。そんなこと言ってどうするんでしょう。アイドルにでもなろうとしているのでしょうか。
そうそう、薫さんの二匹のレトリバー、ザジ(雄)とシャンティ(雌)がですね、
この踊りの最中、異様に興奮しだしまして。
ザジは去勢してるんですけど、なんか「萌え」ちゃったみたいです。
シャンティを押し倒して、「挑み」はじめたのです。
アニマルと化して。
うぅむ、動物の回春剤か。
現場

大成功のイベントでした。
この夜は、意外なくらいにリーディング・セッションの占める割合は少なかったのですが、
終わったあと、「子宮の日」を体験した!という実感の湧くものでした。
たぶん、都会の真ん中ではあるけれど、自然の、とくに木と水と闇の存在が大きかったこと、
プラハさんのダンスから、女性の、人間の、動く美しさがぞんぶんに伝わったこと、
それからザジとシャンティ!
つまり、場所と人と犬(?)があれば、どんな形でも子宮会議は開かれる、ということでしょう。
逆にいうと、洞口依子さんが『子宮会議』という本を書いた時点では、
まだ会議は始まっていなかったのだと思います。
彼女はおそらく、これからも、またこの夜とはちがった方法で、子宮会議を開くはずです。
そのためには、場所と人と犬(?)がいるし、彼女は、いてほしいのです。
他者とつながろうとするくらいに、彼女は強くなったのだと、この夜思ったのは、
私がめずらしくワインなど飲んでホロ酔いだったからではないはずです。

でもやっぱり、出来たてのホット・ワインは無上の喜び。

 http://jp.youtube.com/watch?v=O6zrMYvD65Q(この夜のベリーダンサーズを依子さんが撮った動画)

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