ジュテーム わたしはけもの』(劇場版)(2008)

(当サイト「洞口日和」は、山藤純子役の洞口依子さんを応援するサイトです。
この『ジュテーム』の解説は、依子さんのキャラクターを中心に語るもので、
いわゆる作品解説とは趣旨が異なります)


テレビ版  のタイトルにあった『〜』がなくなって、『ジュテーム わたしはけもの』に変わっています。
7回分を1時間49分にまとめたもので、セリフがテレビ版よりあからさまな箇所があり、
なによりラストがハッピー・エンディングに変わっています。

洞口依子さん演ずる山藤純子は、それでもやはり重要なキャラクター。
由佳に男の喜ばせ方やあしらい方をアドバイスし、コールガールの心得を伝授するマスターです。

テレビ版では、由佳が私生活でつまづいたとき、山藤の仕事上のアドバイスが、
人生の指南のように響く効果もありましたが、映画ではそうした部分は省略されています。
元カレとその友人たちにレイプされかけたあと、テレビでは山藤が電話で由佳を気遣う段がありましたが、
そういった描写はカットされていました。
また、進藤代議士の元へ送られた由佳に、「誘惑してやったら?」と悪戯っぽくけしかける場面も省略。
ここは残しておいてほしかったです。
由佳と山藤の微妙な心の二重写しが薄れて、山藤の憂愁に煙る存在が後退したのは残念。

そのぶん、彼女が座って電話をかけている場面は、テレビ以上にイキイキと迫ります。
テレビ版での解説にも書いたことですが、この洞口依子さんの一人芝居は、
斜め上や斜め前から彼女を撮った短いカットの積み重ねで、
これは大きいスクリーンで見るほうが、構図の美しさがより鮮明に伝わりますね。

それに、こういうイレギュラーなアングルからねらっているにも関わらず、
その意図に依子さんの存在感が負けていない。
打ち返すパワーがすごいです。 

また、山藤が由佳と出会う街頭のシーンは残されていて、
そのときの山藤が見せる哀しげな目の光と、
物語の最後にタクシーの中で彼女が見せる表情では、
山藤自身が変わったというよりも、彼女がこちらに投げかける意味合いが変わる。
ちゃんとその変化をこちらが受け止めることができるところに、
彼女の表現の、とても微細でわかりにくいんだけど、伝わると病み付きになってしまう魅力があります。


鎌田 敏夫 脚本
中山 和記 企画
星田 良子 演出
貸川 聡子 プロデューサー

2008年11月22日 角川シネマ新宿2にて限定公開
1時間49分

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