『噂になりたい』(1996頃?)

2008年最初の出演作解説ということで、なににしようかと
洞口研究所の研究員が正月返上で協議を重ねた結果、
なるべく肩の凝らないものがいいんじゃないか、ということになり、
この番組を俎上に乗せることとなりました。

毎回一組の男女有名人をデートに行かせる、
トーク&観光ガイドっぽい内容なんですが、
このオンエア、研究所でも詳しいデータがとれておりません。
番組自体は95年から99年というけっこう長い期間放送されていたのですが、
この回が何年何月のぶんだか、特定できていません。
でも見切り発車します。

というのも、この番組、眠らせておくには惜しい味わいがあるのです。
この回に登場する二人というのが、
洞口依子さんとミスター・タイガース掛布雅之さんなんですね。
どうです、もう、この段階で、珍味がほんのり伝わるでしょう?
関西テレビの番組でした。ヨーリーマニアでも見た人は少ないかもしれない。
それだけによけいに、私はこの話をしたい。させてほしい。

まず、新大阪駅の外で掛布さんが依子さんを待っています。
「シーズン中で忙しいんだけど、この人とデートできるならと駆けつけた」
との言葉と、空の具合、半袖シャツなどから、夏の終わりぐらいかと思います。
やってきた依子さんは風邪で声がかすれ気味。
掛布氏のフェラーリで向かうは鈴鹿市です。

だいたい、依子さんと野球というのがまず容易に結び付きにくいんですが、
到着した鈴鹿市伝統産業会館で、掛布さんが館員のかたの説明に出てくる31という数字に反応すると、
すかさず「掛布さんの背番号ですね」と相槌をうっているくらいで、
じつは昔は阪神ファンだったんですね。

伊勢型紙を使ってしおりに鶴の模様を入れる依子さん。
鈴鹿墨の説明を受けるところでは、書道の有段者であることが判明。
この番組はこういうところが役に立つんです。

鈴鹿サーキットの遊園地。
怖がる掛布さんを尻目にジェットコースターに平気な依子さん。
終わった後、物足りない、と不満をもらします。

そこで再びフェラーリ登場。
今度は掛布さんの運転で、実際にサーキットを走ることになります。
「ぼくがアレジ」
「じゃ、あたしゴクミ?」
「いや、あなたは洞口さんでいいですよ」
このへんの、ツッコミもできてない緩さがまたよい味わい。

コースマップを膝に助手席に座った依子さん、
「 ファミコンより楽しい」などと、車が誤って砂地に突っ込むんでも大ハシャギです。
「今度はもの足りた」とご満悦。
中学一年のときに「GO!GO!掛布」のレコードを持っているほどの掛布ファンで、
掛布さんの結婚を機に野球熱が冷めたとまで告白します。
それって、巨人で王さんが世界記録に迫ってた頃ですよね。
同時に阪神ファンのアンチ巨人熱も凄かったですが、依子さんもそっちだったとは。
ためになる番組ですね〜

続いてホンダ・コレクション・ホールを訪れて、セナやベルガーが乗った車を見学。
ここでの依子さんの反応はイマイチ。
掛布さんはスーパーカブを指して「少年ジェット」の名前を出しますが、依子さんは微妙にわからないようす。

その後、もう一度サーキットのほうへ戻り、カート・レースが体験できるカートランドへ。
すごいなぁ、こんな依子さんの姿って。
洞口依子と掛布が鈴鹿でレース。シュールすぎる。

「これがいちばんこわかった」ともっともな感想を述べる依子さん。
残念ながら結果は最下位。
しかしこれ、掛布さんに勝つのもあんまりいい絵にはならんだろうし、
こっちのほうが据わりのいい結果かも。
それに、やはり顔色があまりよくないし。

ここでランチ・タイムに穴子料理。
穴子の刺身ってうまいのかな。「甘い」らしいです。
気持ちもほぐれたふたりの話題は、どうしたって恋愛談。
依子さんに会うまで「話しづらい」感じかと思っていた、と掛布氏。
「バタ臭い顔の男はダメ」
「年齢は関係ない」
「スポーツマンがすき」
などの依子さんの言葉に、いちいち照れておしぼりで顔をぬぐうのが可愛い。

「球場を埋めつくした五万人の観衆の目より、
自分の招待した一人の女性の視線のほうが重い」
の言葉にキャーと声をあげて喜ぶ無防備な依子さんも良し。

最後は海へ出て、波打ち際で
「潮風で荒れてますが」と遠慮がちに差し出す掛布氏の左頬に、
「風邪で申し訳ありません」と言いながら軽くチュッパチャップス。
(私が照れてどうする)

そして依子さんの感想
「すごく楽しかった。不思議な一日でした」
見てるほうはもっと不思議な気分でしたよ、これ。

だいたい掛布さんというと、関西のバラエティーでは、
特にボケでもツッコミでもなく、なんとなくモニターを見てたり、
コメントを求められて「ぼくもそうおもいますねぇ」と笑顔で答える「ゆるキャラ」。
対する依子さんも、あんまり自分から司会進行したりする感じではありません。
この番組は、そんな二人の距離のあいだに、はっきりしない鈴鹿の空模様が絶妙な表情で広がっていて、
なんとも枯れた味わいが醸し出されています。
そして、ご本人にはお気の毒ですけど、依子さんの風邪でかすれた声が、
全体にたくまざる物悲しさを与えています。

こういう体調の悪さが出て残るのがテレビの怖いところですし、
ご本人はあんまり見返したくないかもしれませんが、
臆することなく笑顔で照れまくる掛布さんの緩さと相俟って、
なかなか普通では見れない無防備な雰囲気の番組に仕上がってます。

肩が凝らないどころか、脱臼寸前。

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