『虎乃門・洞口依子の虎乃門』(2002)

テレビ朝日の深夜バラエティ生番組『虎乃門』(当時の表記)に依子さんが出演した回です。
この番組では、いわゆるゲストを「ゲストMC」として迎え、
レギュラー陣のサポートつきで、進行役を担当させていたようです。

出演時の依子さんの写真が、番組HPにあります。(→http://www.tv-asahi.co.jp/tiger/contents/guest/index.html
依子さんは、第41代目ゲストMC。
番組は2008年9月に終了しているので、このページもいずれリンクが切れるのでしょう。
見ると、依子さんの次の次にフローラン・ダバディ氏の顔があったりする、
そんな2002年です。
番組内ではBy The Wayの頃のレッチリ来日告知があったり、
CMではアンダーワールドのA Hundred Days Offが宣伝されていたり。
音楽ってすごい。瞬時にして気持ちがその頃に飛んでいってしまいます。

番組は、マスクでブラックタイガーに扮した蛭子能収さんと依子さんのやりとりで始まります。
「アナタ、だれなんですか」と笑い転げる依子さん。
CM明けて、ゲストMCとして正式に紹介され、
「この番組はよく見ている。いとう(せいこう)さんの司会のときに、モバイル投票したりします」

最初のコーナーは、番組の名物、井筒監督が封切作をぶったぎる、「こちトラ自腹じゃ!」です。
この回で俎上に乗るのは『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』。
気がついたんですけど、このとき、出演者の誰もまだ「おバカ」という言葉を使ってません。

監督は、世界情勢がシリアスになっている時にこんな下ネタ映画を作る心意気は買うが、
いかんせんスラングやギャグの元ネタが日本人にはわからない、と5点満点で★★の評価。
このシリーズのファンで、すでに同作も劇場で観ていた依子さんは、
「英語の勉強にもなるし、まぁ、いいんでは」といった評価。
「英語の勉強って言っても、隠語ばっかりやがな!」との監督の返しに爆笑してます。

監督のコメントは辛口として知られてますけど、依子さんだって、いっとき、
映画会社の宣伝部が顔を青くするようなコメントを連発していた前科があります。
というより、評論家以外に、同業の身であそこまで言っちゃった人は他にいないでしょう。
あ、評論家はもっと言わないか。

そういうことを踏まえると、井筒監督が「洞口さん」と呼んでいるのが、なんかいい響きです。
まぁごく当たり前の礼儀ではあるので深読みは承知ですが、
ディレクターズカンパニーというのもあるし、リスペクトを感じます。
それに、このお2人が並ぶと、80年代半ばの映画雑誌やタウン誌を思い出したりしますね。
21世紀の深夜バラエティで、『オースティン・パワーズ』の話をしている井筒監督と洞口依子。
いいと思う。
そんなこともあって、言外に歴史を感じさせる「洞口さん」。

『オースティン・パワーズ』以外に名前があがった当時の話題作は、
『バイオハザード』、『猫の恩返し』、『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』、
そしてジョン・ウーの『ウィンドトーカーズ』。
「洞口さん、この中で、とくに観てみたいものはありますか?」とのフリに、
「え?いや、とくにないですね…」とのあまりに自然体な返答。
笑いながら、そうだろうな、と納得するんですけど、
ジョン・ウーについては、やはり、ひとこと拝聴したかったですね。

続いて蛭子さんの「ビデオでも見ましょうか」のコーナー。
視聴者おすすめのビデオを、蛭子さんがレンタルして鑑賞し、感想を述べます。
ジュゼッペ・トルナトーレの『マレーナ』がお題なんですが、
ここでも話は下(シモ)のほうへ進みます。
このへん、依子さんは品川庄司などのトークを聞いていて、積極的に会話には加わってきません。

そして最後が、ゲストMCが5分の時間を与えられ、自由なテーマで一人で講義をするコーナー。
依子さんは、「だめな男にひっかからない方法」について、黒板を使いながらトークします。
けっこう、たいへんそうです。
「いろんな国を旅してきた私ですが」と前フリして、
「ジャマイカで、仕事もせずにDJとかして、日本女性を見ると『ヨー、ヨー』とナンパしにくる男」
の絵を描いて説明。この絵がすごくて、あらゆる威厳や知性を剥奪されたようなダメ人間の図。
「こんな男でも、『優しい』とか言ってだまされる日本人がいるんですね」とコメント。

そして、今度は実に機能主義的に簡略化された日本列島の絵を描き、
「ここが東京。最近、知り合ったバーの経営者の事なんですが」と、
スキンヘッドの日本人男性の写真を公開します。
「見てのとおり、変な人なんだけど、自分では女性にモテると思い込んでる。
こういう人はヘンにカッコつけるより、ツイスターゲームでもしてるほうが、
よっぽど女性にモテるんじゃないでしょうか」
そして、
「海外でダメ男にひっかかったら、こういう日本のダメ男にひっかかってみてはどうでしょうか。
逆に、日本でこういうダメ男にひっかかったら、今度は海外のダメ男にひっかかってみては、どうでしょうか」
すごい。ミラクルな結論です。最後には、「ひっかからない方法」じゃなくなってしまった!
「あ、まだ時間が少し余ってる。どうしよう!踊りでも踊ろうか?」
女優さんですから、こういうトーク、専門じゃないですもんね。
最初は制限時間に焦っているように見えた目が、最後は余白にあわてているようです。

バラエティ番組でこんな状態になっている依子さんは、これを置いてほかにはないのでは?
その点でも貴重です。
全体を見終わって、もしこれがゲストMC、つまり司会という立場でなかったら、
雰囲気がちがったんだろうな、と想像しました。


2002年9月6日(金) 
テレビ朝日にて深夜1:50〜2:50放送

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