富江(1999年)

YORIKO
DOGUCHI
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この作品は『洞口依子映画祭』で上映されます!

正直言って、私は『CURE キュア』とこの『富江』の依子さんを混同してしまうことがあります。
もちろん、映画がべつだし、依子さんが表現しているものにも違いがある。
でも、警察に呼び出されるのはどっちだったかな…タバコ吸ってるのはどっちだったかな…となると、
自信なくなります。(正解は、どっちも『富江』)

さて、精神科クリニックの細野辰子先生が、『富江』でのヨーリーです。
中村麻美さん演じる主人公・月子の不眠症を催眠療法で診断するうち、
恐しい事態に巻き込まれて行くわけですが、さすが及川中さんの監督脚本だけあって、
伏線っぽく語られる設定(細野先生の妹のこと)も拾いに行かないし、あちこちが不安感だらけ。
依子先生の役割も、月子とともに謎に立ち向かうわけでもなく、途中で事態から逃げてしまう。
彼女の事態との関わりの深度が非常に微妙でして、こういう役には、もう洞口依子先生しかいません。

登場した瞬間、観客はこの先生に安心してよいのかがわかりません。
診察室のカーテンでさえも、『地獄の警備員』の給湯室を連想してしまう。
なによりも月子さんに感情移入ができないまま話が進行し、ただでさえ恐怖の中心が定かでない恐ろしい世界に、
依子先生の存在は効果満点ですね。

洞口依子さんのこれはなんなんでしょうね。
ひとことで言うと、つかみどころのなさ。
得体のしれなさ。
人物のキャラクターとして、主張ははっきりしてるのに、なかなか腹が読めない感じ、と言いましょうか。
腹黒いというのとも違って、腹白い(そんな言い方あるか?)ところさえも、簡単に見せない感じ。

私がいちばん好きな場面は、クライマックスの直前で、診察室のカーテンを開けて依子先生がぬっと現れるシーン。
ここがいちばん怖かった。
このときの髪の揺れ加減や顔の隠れ具合は、これは、意図的なものなんでしょ?


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