〜洞口依子 出演作品解説〜

『特捜9 第3話 殺人都市計画』(2018年)

『警視庁捜査一課9係』の後を継ぐ新シリーズの第3話。
洞口依子さんは下條アトムさん演じる建築家の妻の役。夫が保育園建設プロジェクトのコンペのライバルを殺害した容疑で逮捕されたところ、凶器のナイフを彼女が保管していたことが発覚。重要参考人として取り調べを受けるが、事件当夜の記憶が取り戻せない。やがて、事件の人物関係に夫の前妻の息子が浮上し、意外な真相が明らかにされる。

1時間の尺の中で、ひとつの役柄の過去と現在、さらにその現在も複数の異なる印象を与えて演じる洞口さんを見ることができるのがファンには楽しい。
まずは建築家宅を訪れる特捜9のメンバーを迎える姿。隙のない所作で著名人の妻としての風格を漂わせながら、扉を開けて顔を出したとたんに立ち込める「何かを知っている」指数はただ事ではない。

それが取り調べになると『相棒 第2話教授夫人とその愛人』(2002年)での記憶喪失を彷彿させる受け答えに転じる。そこでのジラすような曖昧さ、そして絶妙な間合いで催される彼女のアクビが、ゴールデンタイムのミステリーの空気を一変させる。とくにこの不意打ちのアクビは効果的。ふてぶてしさでも大胆さでもなく、何かこう、特別に摩訶不思議なものを見てしまった気にさせる。このアクビは作品の中に設けられた別の世界への隠し扉みたいなもので、こういう扉をアクビひとつで創りだすところも洞口さんの魅力だ。

回想場面で役柄の30年前を演じているのも見どころの一つ。柔和で優しい笑みを浮かべて子供と箱ブランコに揺られる姿は、実際の30年前にはちょっと想像つかなかった。
また、夫役の下條アトムさんは洞口さんがエベレストに”出会った”『世界ウルルン滞在記』(1995年)でナレーションをつとめていたこともあり、ご本人同士もそうだろうが、ファンはファンで、お二方が俳優としてようやく”出会った〜”と言いたくなる気持ちを抑えられない。

2018年4月25日(水)21:00〜21:54 テレビ朝日系列で放送

出演
井ノ原快彦 寺尾聰 津田寛治 羽田美智子 
吹越満 田口浩正 山田裕貴 洞口依子 下條アトム

脚本 真部千晶
監督 吉田啓一郎



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洞口日和