〜洞口依子さん出演作品解説〜

『徹子の部屋』(2024年5月29日)

 洞口依子さんのファンである私は、映画やドラマはもちろんのこと、トーク番組への出演も毎回楽しみにしています。それが日本の代表的なトーク番組『徹子の部屋』であればなおさらのこと、しかも今回が17年ぶりに4度目の出演とあり、お祝いのフラワースタンドでも送りたい気分で見ました。

 番組は過去の出演映像を挿んでの進行。1995年の初登場の回、癌闘病の苦しさを涙をまじえて語る2004年、晴れやかな表情で弾むように明るい2007年。
 それらを黒柳さんと振り返りながら語られるのは、はじめて海外で長期にわたって撮影した『SHOGUN 将軍』の現場のこと、今年で40年目を迎えるキャリアの節目に記念のレコードを秋に発表する計画があること、リンパ浮腫のむくみを抑えるために高価な弾性ストッキングを使用していること、認知症を患っているお母さんのこと、そのお母さんが洞口さんの仕事での経験を自分の人生であるかのように思い込んでいること、高齢になってから劇団に入った義理のお父さんのこと、など。
 どれもある程度の年齢に達した者には他人事ではない重みがあって、洞口さんが19歳の時に『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(このタイトルを黒柳さんが面白がっていました!)でデビューした頃には想像もつかなかったトピックでもあります。

 しかし私は、こんなふうに洞口依子さんから人生の歳月を感じることに、やわらかい安心をおぼえます。それは彼女の歳月が止まることなく、九死に一生を得て今も前を向いて進んでいて、その姿を私が生きて見ることができる証だからです。『SHOGUN 将軍』で桐の方を堂々と演じたり、こうやってトーク番組に出演していることが、ファンには大きな喜びなのです。17年ぶりの『徹子の部屋』はその思いを強くさせました。
 しかもそれらのトピックについて話す洞口さんの表情はとても穏やかで、自然な笑顔がこぼれていました。たとえばお母さんについて、最初は戸惑ったり悲しんだりもしたけれど、今はありのままに受け入れているというニュアンスです。それは誰にとっても一番難しい在り方なのですが、今回の洞口さんは過去のどの回よりも「ありのまま」を感じさせました。その話に対して黒柳さんが返した「あなたとお母さまにとって、それが幸せならば、それでいいと思う」の言葉は、さすが大ベテランであり人生の大先輩の深みを持っていて、私の心にも響きました。

 洞口さんのエッセイなどで、幼少期のエピソードを何度か読んだことがあります。著書の『子宮会議』にも書かれていました。ケストナーの『どうぶつ会議』が大好きで、笑顔で写真に撮られるのが苦手で、ちょっと変わった子だったようです。ある種、『窓ぎわのトットちゃん』に通ずる部分もあったのではないでしょうか。
 また、今回は洞口さんが黒柳さんを猫化した自作のイラストをプレゼントし、それを本当に気に入った様子で見ている黒柳さんの姿も印象に残りました。その”猫柳徹子”さんの絵が『ザ・ベストテン』の頃を彷彿とさせていたのも、洞口さんと年齢の近い私には頷けるところでした。
 そういえば、今回の会話を聞いているあいだ、私は自分が猫になって二人の話す顔を交互に見上げているみたいな気分を味わいました。そのくらい穏やかで緩やかで、猫でなければ過ごせないような贅沢なひとときだったのです。
 話の内容には重みがありつつ、せせらぐように流れてゆくトーク。肩肘張らない、でもあきらめない。それをちゃんと受け止めてサラッと返す。黒柳さんと洞口さんの言葉と表情が大人の素敵さでいっぱいな、4度目の『徹子の部屋』でした。前回から17年がたって、これを見れて良かったと思います。

(2024年5月29日放送 テレビ朝日)


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洞口日和