『徹子の部屋』(2007年7月24日火曜日 ゲスト・洞口依子)



黒柳徹子(以下、黒柳): 本当に涼しそうな夏の絽のお召し物。洞口依子さんでいらっしゃいます。
                                    まぁどうもよくいらしてくださいました。

洞口依子(以下、洞口): (笑顔で)どうも。

黒柳: お元気そうで。

洞口: おかげさまで。

黒柳: ねぇ〜、これが本来のあなたのお姿なんですってねぇ。

洞口: そうなんですよ(笑)。 本来の姿っていうのもおかしいけど・・・

黒柳: 普通?このぐらいの体重のときが。

洞口: やっと戻りましたね、ベストに。 はい。

黒柳: この前、二年半前に出ていただいたんですけど、
     そのときは、ちょうど手術なすって十ヶ月ぐらいていうときでしたね。

洞口: そうですね。

黒柳: 20キロ?肥ってらしたそうで・・・(前回2004年12月出演時の写真)

洞口: ビックリ!今見てびっくりしちゃった。

黒柳: あたしもちょっと気がつかなかったんですけど、前、あのほら、どっちにしても、向田邦子さんのドラマのときに、
     いつもいちばん若い妹さんの役・・・私がナレーションやってるときにやってらしたんで、まぁあんな感じかなぁと思ってたんですけど、
     いまちょっと拝見すると、やっぱりちょっと肥ってらっしゃったというか、頭にね、あぁいう(帽子)をかぶってらしたんでね。

洞口: (笑)そうですねぇ・・・ちょっとね、薬のせいで毛が痩せてるっていうか、ちょっとペシャンコにはなって・・・

黒柳: そうなの、そういうこともあって・・・ま、「なんでですか」とは伺ったりはできなかったんですけども。
     とにかくたいへんな手術、ね、大手術だったですからね、あのとき・・・

洞口: あのぅ、思えば・・・本当におっきい手術をしたな、という手ごたえが、あとあとにね、感じました。

黒柳: 私もあの時はね、そんなに、もちろん、よくわかってたんですけど、今あのときのことを思い出して、
          今のあなたを拝見するとね、いやぁ、辛かったんだろうなぁてねぇ(洞口、笑う)。本当に思いますよねぇ、お若くて・・・ 
     それで、あれだったんですよね、子宮もそうだったんだけど、卵巣も…

洞口: そうですね、だから、(おなかのあたりを指して)ここらへんにあるものをすべて(取り出す手振り)。

黒柳: リンパ節もとか、いろんなものもだったんで、あの、ご主人に「離婚してくださいって言ったんです」、なんてね。
    「赤ちゃん、産めないから」っておっしゃったとかね。
    ま、そういう話もしていただきたいんですけど、とにかく、20キロ、(洞口のほうを掌で指して)これが普通なんですね。
    あのときは私もね、気づかなかったんですけどね、お召し物も、プカプカしている、あったかそうなものが・・・

洞口: そうですね。なんか、こう、体のラインを隠したくなっちゃう、どうしても、肥ると。

黒柳: あぁそうなんだ。そういう感じだったのね。ですから二年半前の洞口さんを、ちょっと、いろんなお話してくださってるんでご覧ください。

洞口: (照れて笑う)

 
(前回、2004年12月出演時のビデオ)

黒柳: そういうとき、ご主人ていうのはとてもたすけになってくださったの?

洞口: (うなずきながら、しばし沈黙)・・・そうですね・・・やっぱり同じ屋根の下で、私がもう、
          ほんと、なんか、「癌ていう文字ばっかりだよ!」とか
          「子宮頸癌」の「頸」ていう字はどういう意味がある「頸」なのかがわからない、そういうわかんない漢字が、
          もう毎日図書館に行って調べて、インターネットで調べて・・・もちろん彼のご両親のこともあるし・・・で、みんな優しくて・・・

黒柳: そうね。優しくしてくださっているのに、またそれがちがう意味で自分のほうに、なんでしょうね、
          曲がって自分でそれを受け取ってしまったりするように、だんだん性格が変わってゆくのも、
          あなたにとってはイヤだったでしょうしね…

洞口: そうなんですよ。もう、本当に、癌ていう病気って、本当に人を卑屈にさせるっていうか・・・
            いやな人間にさせちゃうなって、そのときすごく思って。
           だけど・・・もうこんなことをしてても前には進まないから、
           とにかく、「治るんだから!」ってみんなに言われて、

黒柳: そうですねぇ・・・


洞口: (目を潤ませながら笑う)あ、「かわいそうな子」(笑)! あたし今、なんか涙ウルウルしてきちゃった。

黒柳: あたしもね、思い出すと・・・あのときはね、必死であなたの話を伺ってたんですけど、
          いま拝見したほうが、なんか、すっごい涙・・・

洞口: (笑)なんか、わたし、自分の姿見ながら、「かわそうな子!」とか思っちゃった!(ハンカチを目にあてる)

黒柳: ほんとにそう思います。
          なんか、つらい、かなしい、そういうものを通り越して、十ヶ月目くらいだったんだけど、
     やっぱり不安とか、喪失感がちょっと大きかったですか

洞口: 大きかったですねぇ。埋まらないものを自分の中に抱えちゃったことが、
           すごく・・・戸惑って・・・なにをどうしたらいいのかわからない・・・

黒柳: だからあのときは一生懸命話してくださったし、わたくしも一生懸命うかがってたし、
          あれはあれでまたプクプクしてかっわいかったしね。(洞口、笑う)
     あんなふうなんだろう、って思ってはいましたけども、20キロも肥ってらっしゃったとは、ちょっと思わなかったんですけど。
    必死で闘ってらっしゃる感じが凄くあったのでね、
          それよりも、いま拝見したほうが本当に胸がいっぱいになりますね、健気。

洞口: ほんとビックリ、なんか、「なにしゃべってるの、この人?」って。
     そんな、余裕もなにもないのに、なにをこんな一生懸命自分を、なにか、主張したいのかな?って、
            いま、抱きしめたくなっちゃう(笑)

黒柳: ほんとそうですよね。ま、あれからずいぶんもう、二年半たつと、変わりました?いろんなことが。

洞口: いろんなことがありましたけど、ここ・・・そうですね・・・
           今年に入って、少し、なにかこう見えてきたような感じがします。

黒柳: いつも不安なものがあるでしょうからね。だってしょっちゅうまだ病院いらっしゃって?
     いろんなあとあとの治療受けたりなさっているわけでしょう?

洞口: いまはもう定期健診を欠かさず。

黒柳: あ、定期健診を?

洞口: はい。

黒柳: あ、そうなんですか。でもご主人がいらっしゃるので。ご主人はNHKのかたですね

洞口: (照れながら)はい。

黒柳: それで、ご親切に、この前のときも、ついて来ていらしたけど、今日もいらっしゃるってホント?

洞口: えぇ、仕事はどうしてるんでしょうかね(笑)。 しっかりしてください、って感じですね!(笑)

黒柳: でも今日はお仕事はちゃんと休みます、っていうことでいらっしゃってくださっているんだと思うんですけども。
     ただ、そのあいだあなたは、いろんなことがたくさんあったんだけど、沖縄にいらして。
     わたし、とってもおもしろかったんだけど、沖縄に行ったらとっても気が休まって。ね・・・

洞口: えぇ。

黒柳: それであの、「マブイ」・・・(笑)あなたが「マブイ」を落としたって、あれはどうしたの、話としては?

洞口: あれは、某番組の、旅番組で沖縄に行って、

黒柳: 旅番組?

洞口: えぇ。突然、具合が悪くなったんですよ。それで、なんにも思い当たるふしはないし。
    あたしちょっとこう、精神的に病んでるところもあったので、そういう、発作みたいな、 
          ね、パニックの発作があったのかなって思ったんですけど、
    薬をのんでも、一向に治らないんですよ。
    で、どうしたんだろうって思ったら、島の人が、「マブイを落としたんじゃない?」
    「マブイってなぁに?」ったら、魂を落としたから、落とした場所に戻って、あなたのマブイを汲みます、
          要するに魂を拾って、中に・・・

黒柳: 戻してあげるって?

洞口: (うなずく)それで、一緒にやっていただいて(笑)

黒柳: で、行ったの?どこかまで?

洞口: あの、「久部良割(くぶらばり)」ってところがあって、与那国にね。

黒柳: えぇ。与那国。

洞口: そこはちょっとこう、昔かなしい伝説があったところなんですけどね。

黒柳: そのあたりに落っことしたらしかったのね?

洞口: そして「マブイ」を、こう、入れていただいたら、20分後にはケロリとしてました。

黒柳: ほんとうに!

洞口: はい。びっくりしました!

黒柳: あぁそう!じゃホントにその「マブイ」を落としたのね、あなたね。

洞口: みたいですね。初めての経験だったのでわからなかったんですけど。

黒柳: ま、「マブイ」ってね、東京では、なんていうの、「派手な人」のことを「マブい」とか言う?

洞口: あ!そっちの「マブい」!(笑)

黒柳: ま、もちろん、そうじゃないのよ!
     だけど、沖縄では魂のことを「マブイ」って言って、それがちょっとの加減で落としちゃうと、
          それを拾って戻してくださると、ケロッと治ったってとこがねぇ。
     やっぱりいろんなことがあるんですねぇ。

洞口: 沖縄ではわりと、ポピュラー・・・「ポピュラー」(笑)っていうのも変ですけど、よくあることみたいですね。
    「おばあちゃまのマブイが庭の裏っかわに落っこってたよ」って言って、あわてて拾いに行って、島で落っことしたから、
    那覇の病院に入院していると、急いで船に乗って・・・

黒柳: どの人が落としたというのがわかるの?

洞口: えぇ。「おたくのおばぁのマブイが裏に落っこってたよ」みたいな。(笑)
     なんか、見てみたいですよね!

黒柳: それでそれを持ってってあげたら、そのおばあさんがよくなったのかしら。

洞口: そうなんですって。

黒柳: よくなったの!

洞口: えぇ。

黒柳: へぇ〜!

洞口: おもしろい話を聞きます。

黒柳: おもしろいですねぇ!え〜、いろんなことがあるものねぇ!
     でもそういうのを体験したりとか、それからみなさんの親切?
     なんかあなたは、ずいぶん、思ってもみなかったんですけど、ブログとかそういうものに、みなさんの・・・

洞口: えぇ。行くたんびに、とてもよくしていただいて、それだけではなくて、なんだろう、
           自分で動けるような、自信がつくって、言うんですか。
     優しいだけに甘んじているだけではなくて、いい距離感でほっといてくれるんですよね。

黒柳: あ、沖縄で。

洞口: えぇ。

黒柳: そうですね。それからまた、みなさんのしゃべる言葉がやさしいじゃない。

洞口: そうですよねぇ。

黒柳: 「そこ行くと曲がり角があるさぁ」なんて、すごい屈強な男の人が、「車ぶつけるさぁ、みんな気をつけて」とか。

洞口: しばらく、私、沖縄の方言が抜けません、だから。

黒柳: そうでしょうねぇ。

洞口: ・・・帰ってきて。

黒柳: 本当に、やさしい、穏やかなって、どういうんだろうって、ほんと、私もつくづく思いますよね。
     でも、それもあるんだけども、そうじゃなくて、あなたがこういう病気なさったっていうことで、それを発表なすったら、
     もう本当にびっくりするほどたくさんのそういうかたたちがいらっしゃるってことが、わかったんですって?

洞口: そうですね。
     私、ブログというものをやってるんですけど、わりと、同じように悩みを抱えていらっしゃるかたがいるんだということに、
            とても私も励まされて、支えになって。
     あの、ブログというのは不思議なもので、
            なぜ日記を世の中の人に公開までして書き続けなきゃいけないのかっていう苦悩があるんですけど、
     そういう人たちが、「ゆっくりでいいから、またぜひなにか書いてください」てコメントを寄せていただくとね、
     あぁなんか、つながってるっていいなって、素直に思えるんです。

黒柳: なるほどね。だからインターネットみたいなものも、うまくそういうふうに使うとね、
           いいんだろうなってね、思います。
     でもそれにしても本当、お元気・・・心身ともにお元気という感じでね。

洞口: うん。 いま、けっこう絶好調かもしれない(笑)

黒柳: ほんとね。あの、さっきの拝見すると、あなたも泣いちゃうくらい、抱きしめてあげたいくらいっていう、
          ほんとに二年半前のあなたなんだけど、
     ちょうど手術なすって十ヶ月目っていういちばん、ね、外に出てもいいっていう最初のころだったんだけど、
          やっぱりね、不安心だったんでしょうね、きっとね。
     だから、必死でいろいろおっしゃってくださったんだけど。

洞口: なんかね、やっぱり、女優をやっていると、引っ込んでいる自分が、とっても切なくなってくるんですよ。
    テレビに映ってない自分だとか、映画館の暗闇のスクリーンにいない自分とか。
          そうすると、家から一歩も出られなくなっちゃう。

黒柳: ねぇ、そうねぇ。

洞口: 女優やめたいんであれば、そういう生き方もいいかもしれないんですけど、
            あたしはまだまだ、まだまだやりたい!と思っていたんで。

黒柳: まぁでも、本当にお元気におなりになってね。
     今日、みなさん、こんな素敵なあなたの夏の絽の着物の素敵な、それ・・・

洞口: ありがとうございます。あの、こないだね、『徹子の部屋』に出演が決まったのよ、って母に言ったら、
           「じゃあ、着物着る?」って言って、一緒に選んで・・・

黒柳: あぁ!お母様が?

洞口: で、ちょうど夏この短冊に、夏の花の柄が・・・

黒柳: ねぇ、なんて可愛いんでしょうね!その短冊にね、夏の柄が入っていてね、帯も、絽で。

洞口: そうなんですよね。

黒柳: 兎ですかね?帯止め、兎ですごく可愛いの。

洞口: ありがとうございます。

黒柳: ほんと、若いかたね、そういう夏の着物って大好きなんだけど、お召しになってらっしゃるとこもね、ほんとに涼しそうで、

洞口: えぇ。ほんとになんか、涼しいし、私、絽とか、けっこう気を遣うのかなって思っていたら、
          軽いから、逆に袷よりも着やすいですね。

黒柳: なるほど。でもまぁ、20キロお痩せになったんですから、あのときはずいぶん、ご自分でもびっくりするくらいだったんでしょ?

洞口: もうね、着ぐるみの中に入っている気分。みんなは私のことを、「マトリョーシカ人形」って言ってましたけど。

黒柳: マトリョーシカ。

洞口: だから、いちばんちっちゃいのが核にあって、どんどんどんどん増えてって、
           私はだから、着ぐるみの中から、のぞき穴から人を見ているような感じ。

黒柳: あれはやっぱり、病気だったから、いろんなものを食べたり飲んだりしたんでしょ?

洞口: そうですね。それもあったし・・・なぜか、お酒に走っちゃたり。

黒柳: ・・・あそう!

洞口: 人には言えないいろいろな悩みを抱えていくうちに、お酒が友達ていうか、
           お酒のチカラを借りて、気持ちを発散させるようになっていっちゃったんですね。

黒柳: 暴食はなかったの?

洞口: 暴食は、もともとそんなに食べるほうではないので、

(CM)

黒柳: でもそういった若いかたが婦人科の病気になると、なかなか病院にも、ね、行きにくい。

洞口: (苦笑)迷いすぎるぐらい迷いましたね。
           ひょっとしてら、病院に行きたくなかったんじゃないかなって思うくらい迷いましたね。

黒柳: でも最終的にはいらっしゃったから良かった

洞口: はい。

黒柳: だけどやっぱり、まぁ、もう子供産んであげられないからってね、ご主人におっしゃったら、
     「べつに子供がほしいから結婚したんじゃない」っておっしゃってくださったって、おっしゃってましたよね、あのとき。

洞口: そうですね。なによりも、彼のね、ご両親がそう言ってくださったのが、

黒柳: そう!

洞口: 嬉しい、って言うよりも、なんか、まぁそのまま受け取りましたけど。
           ありがたい言葉だなと思いながら。

黒柳: ほんとにね。でもまぁ、ぜんぶあっても子供を産まない人もいるんだし。

洞口: 今ねぇ。いらっしゃいますよね。

黒柳: そうですよ。そうです。結婚しててもね。

洞口: あたしは、もうこういう体になってしまったので、ないものねだりはやめて、
          そのぶん他の人が新しい命を産んでくれたりするのを聞いたり見たりすると、
    すごく心の奥からあったかい気持ちになれるんですね!
    今まで、わりと、「あー子供?」って感じだったんですけど、先日もとなりのかたがお子さんを産まれたんで、お話をうかがって、
    なんか全然他人なのにまるで身内のように心の中がホッてあったかくなります。

黒柳: 「あぁ、よかったわね」ていう・・・でもそういうふうに思えるようになったのは、ねぇ、よかったですよねぇ。

洞口: そうですねぇ。

黒柳: でも本当に、いまおっしゃったように、ご本もお書きになったんですけど、『子宮会議』っていう?

洞口: はい(笑)

黒柳: とても可愛い題名だと思いまして。あなた、ケストナーをお好きなんですってね。

洞口: 大好きなんです。

黒柳: あたしも大好きなのよ。

洞口: そうなんですか。

黒柳: ケストナーから手紙もらったこともある・・・

洞口: えぇ!えぇっ!

黒柳: ちょっと自慢。むかし。

洞口: すごい自慢!いいなぁ!

黒柳: そう、すごい自慢。ずいぶん前ですけどもね。で、あれは『動物会議』だったんですけども、

洞口: あ〜、なんかすごい動揺しちゃった、いま。

黒柳: (笑)ごめんなさい。で、これはあれなんですってね。子宮と女の人が対話する形で?

洞口: うん。私と私の中にある子宮との対話が基本なんですけれども、実際べつにそれが対話形式で書かれているわけではなくって。
     私の中にある子宮を中心に、あたしがさらにまつわる人たち、いろいろな人たちといろいろな話をしていくうちに、
     私はこうやって元気になっていきました、みたいなお話です。

黒柳: これはなにか、お母様に捧げるって、お母様は元気でいらっしゃるんだけど、でこれはお母様に捧げるっていうお気持ち?

洞口: もう最初っからどうしても母に捧げたいと。

黒柳: あ、そうなの、それは今まで思ってらっしゃらなかったことですかね?そういうのって。

洞口: いつもいつも思ってるんだけど、なぜか母は私に厳しくて(笑)。出来が悪いからだと思うんですけども。
    でも、ほんとになんか、今回だけは、ちゃんとこう、母に捧げたかったんです、この本を。

黒柳: あ、そうなの。

洞口: で、ほめてほしかったりして(笑)

黒柳: で、お母様はなんて?

洞口: ・・・う〜ん、まぁ・・・そうですね、まぁ、「よく書けてるんじゃないの?」というふうに言ってますけどね。
    あの、すごい完璧を求める人なので、なかなかね、彼女の思うようには、私はいかないような(笑)。
    だけど、逆に、ハードルが高いって思えば、また頑張れる。

黒柳: そうねぇ。でも、そういうことってありますよね。 私の母なんかも、どっちかっていうとね、
          なんてんですかね、すごいかわがってくれたんだけど、
     120%ほめてはくれるんだけど、なんかね、「ホントかな?」っていうね(笑)、ものが私の中にあって。

洞口: あ、逆にほめられすぎって・・・

黒柳: うん、「ほめられすぎね」って思ってね。本当にそう思ってんのかな、って思うようなところがありましたよ、やっぱり。

洞口: 私はほめられすぎたいです!。

黒柳: あ、ホントに? でもほめられすぎるってね、人間、のんきに暮らせて、
          その代わり、深くは考えなくなりますよ、いろんなことを。

洞口: あ、あたし、そっちのほうがいいですぅ(笑)。

黒柳: 深く考えちゃうほう?

洞口: 考えますねぇ。

黒柳: う〜ん、ぜんぜん考えないですね、私なんか。

洞口: あ、替わりませんか?(笑)

黒柳: (笑)反省を母の胎内に忘れてきた、って母に言われたぐらいですからね。

洞口: すご〜い言葉(笑)

黒柳: うん。そうそう。だからね、ま、そういうこともあるんだけど、
          でもやっぱり、不思議なもので、私じゃないんだから、母はね。

洞口: うん、そうなんですよねぇ。

黒柳: そうなんですよ。人間ってどんなに親しくっても、親子でも兄弟でも、なかなかね。

洞口: そうですね。とくに母と娘の関係っていうのが、なんか、最近になって、
           やっと、こういうことなのかもしれないな、とか、
     そっか、こういうことだったのかな、と思うようになりましたね。

(CM)

黒柳: ほんとに個人的ですけども、ケストナーの『動物会議』から『子宮会議』っていう本の題名になすったっていうのは、
     ケストナーって、読んでるかたも多いと思いますけども、
           私がさっき、ケストナーから手紙いただいたことあるっていうのは、
     いつも訳してらした高橋健二先生っておっしゃるドイツ文学の先生と、若いとき知り合いになって、
     お手紙出し合うときには、合言葉「ケストナー」っていつも書いてたぐらいだったんですね。
     ま、そういうことからケストナーからお手紙いただくようなこといなって。

洞口: うらやましい〜。

黒柳: でもほんとにケストナーの作品は、子供向きのものも、大人向きのものも、すごいですよね。

洞口: そうなんですね。
           だから、ぜひ、私の『子宮会議』といっしょに『動物会議』も読んでいただけるとうれしいなと思ったりするんですよねぇ。

黒柳: そうでしょうね。それでまぁ、風刺もきいてるし。

洞口: そうなんですよね!

黒柳: ユーモアたっぷり。

洞口: そうなんですね!挿絵もすごく可愛いし。

黒柳: 可愛いしね。いつも同じかたが書いてらして。
          『点子ちゃんとアントン』なんて、ものすごくおもしろいですから、読んで・・・
     そういえば、すごくおかしいって言えば、あなたの旦那様のお父さまが、蜷川(幸雄)さんの・・・

洞口: あ!(笑)

黒柳: いま、あのかた、55歳以上の

洞口: ゴールド・シアター。

黒柳: ゴールド・シアターって、すごい、お年をめしたかたたちを養成して、
    (写真。洞口と義父) このかたがお義父さま?

洞口: そうです。

黒柳: で、ずいぶんこのごろみんな頑張って、オーディションやって集めて、お稽古して、
          「公演もやったんだよ」とか。お義父さまおいくつなの?

洞口: 76かしら。

黒柳: 76ぐらい?ものすごく、あれなんですって、老後の単なるお楽しみかと思ったら、もっと一生懸命なんですって?

洞口: もう、すごい、気合いが入ってますねぇ。
           先日、卒業公演に埼玉のほうによばれて行ったんですけども、はっきり行って、2回目の公演なんですね。
    (写真を見て)あ、これがそのときの公演なんですけど。

黒柳: すごいすごい。

洞口: すごいですね、ナントカって今はやりの運動のあれがいらないような素晴らしい肉体してましたけどね。

黒柳: すごいですね。元パイロットでいらしたんですって?

洞口: そうですね。航空自衛隊のジェット・パイロットをやってらっしゃったみたいで、お体はもう、肉体がしっかりされて。

黒柳: すごいわね!

洞口: もうめちゃくちゃジェラシー?

黒柳: あ、蜷川さんのものに出ているのに?

洞口: それもあるし、なんていうんですかね、ズブのしろうとさんだったわけじゃないですか。
     それが70になってこういうことはじめて、あっというまに、なんか、
            ひょっとしたら私を追い抜かしているんではないかと思うんですよ、私がね。
     そうすると、なんか、「ジェラシー!」「あたしももっと頑張んなきゃ」みたいなね。

黒柳: でもそういうかたが、身内にいきなり出現するってことが、おもしろくありません?だって。

洞口: もう、その戸惑いもあります。私は、私のモットーで、ひとつ屋根の下に役者は2人要らない、
           1人でいい、私だけでいい、って感じなんですけど。
     ま、ひとつ屋根の下に今は暮らしてないけれど、なんか2人は要らないなぁ、みたいな(笑)。

黒柳: しかも、嫁に行った先のお義父さまが

洞口: ちょっとねぇ、立場的にもねぇ。あぁでもすごく元気でいきいきと。
     私、もし子供がいて、子供のこういう、なんてんですか、お遊戯会とか発表会の親心ってこういうものかなって思うような、
           ヴァーチャル体験をさせてもらいましたねぇ。

黒柳: 蜷川さんのゴールド・シアターのメンバーになってらっしゃるってこと、すごいですよね。

洞口・黒柳共に笑う

(CM)

黒柳: 蜷川さんがおっしゃってたけどね、そのゴールド・シアターって、ま、「はっきり言ってジジババ劇団」って、
          あのかた、ちっちゃいことおっしゃってましたけど、
    そのおばあさんたちが、みんなダメ出しをするんだって。「あんた、ナントカよ!」ってすごいんだって。
          本当にそうなんですって?

洞口: 義父も・・・言っておりました・・・
    「タジタジなんだよね」「いくつになっても女性はすごいね」って(笑)。

黒柳: 私にね、「黒柳徹子さんが50人ぐらいいると思えばいい」って(笑)

洞口: まぁ!(爆笑)

黒柳: いくらなんでも!って言ったんですけど。
          お義父さまがちょっとセリフなんかおぼえないと、いわれちゃうんですって?

洞口: そう。「あらぁ、セリフまだ入ってきてないワケ?」って、なんか問い詰められて。

黒柳: (笑)すごいわね、女の人ってね。そうやって、シロウトだったのに、
          そうやってオーディションで受けて俳優になったってこともあると思うんですけど。
     おもしろい・・・これから、行く末が楽しみですよね。

洞口: たのしみですねぇ。

黒柳: だって、あなたも身内に、ねぇ、ご主人のお父さまなんですから。

洞口: まぁ、励みになります。私が70すぎて、あぁいうことがやってられるのかな、っていうのも、考えちゃうし。
    逆に、あぁやってイキイキ、ほんとに元気に長生きしてくれるって、すごくうれしいんで。

黒柳: で、あなたは、おまけにウクレレもやってらっしゃるとかで。ま、忙しいですけど、ウクレレ。
     
(パイティティの「Icecream Blues」演奏の映像が流れる)

洞口: そうなんですよ。ま、義父に対抗するには、板の上じゃなくて、同じ板でも、音楽で(笑)。

黒柳: ウクレレで。結局、お友達とユニット組んでいらっしゃるんですって?

洞口: そうなんです。来年にはちゃんとフル・アルバムも録音しようかなっていう。

黒柳: あ、ほんとに。 で、ずいぶん前からやってらっしゃるの?ウクレレっていうものを。

洞口: ウクレレ自体はもう私は8年以上やってるんですが、

黒柳: (洞口、ウクレレを抱えて海に浮かぶ写真)あ、これほんとに水の中でやったの?

洞口: えぇ。これは水の中で弾いてます。

黒柳: すご〜い。

洞口: 沖縄の海。

黒柳: あ、沖縄の水って、こんなにきれい。

洞口: きれいですね。

黒柳: 綺麗って有名ですけどね。

洞口: なのでね、今すごく簡単に音楽って作れるんですよ。コンピュータのいろいろなソフトを使って。
     で、私は、アップルの、マッキントッシュのアップルというコンピュータを使ってやってるんですが、
            そういうのがけっこう便利に使えるようになると、わりと曲を、それぞれ楽曲を提供しあって。
     今度も、8月の4日、渋谷のアップル・ストアでまたライヴをやったりするので。

黒柳: あ、そうなの?

洞口: うん。やっぱり、人前でね、することが好きにならないと。私はやっぱり人前に出てなにかをやる商売だから。
     少しずつ、本も出したし、これから音楽も、もちろん女優も、いろんなことをね。

黒柳: でも考えてみたら、久世(光彦)さん、生きてたら、あなたのウクレレ、好きって言ったかしらね?

洞口: 好きって言わせたい!(笑)

黒柳: ねぇ、久世さんいないから淋しいでしょう。でもまぁお元気でね。本当、おめでとうございました!

洞口: ありがとうございました。

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