『タブロイド』(1998年)

                                                   2010年(平成22年1月23日)第3種郵使物認可 中央新聞社 第1965318号 

驚愕!! ドラマ『タブロイド』(1998年 フジテレビ)に
浮上する”新”犯人

洞口依子(妻役)の不敵な存在感に隠された真相??


 ♪あなたに会えたこと 幸せのあとさき…♪ 主題歌となったGLAYの大ヒット曲「Be With You」(アンリミテッド・レコーズ)を聞いて1シーンを思い出す人も多いだろう。
 1998年秋にオンエアされたドラマ『タブロイド』(フジテレビ 水曜夜9時)。 熱血と正義感がたたって全国紙「中央新聞」政治部から大衆紙「夕刊トップ」に左遷された女性記者片山咲(常盤貴子)が、冤罪を訴える男・真鍋敏彦(真田広之)を支援すべく奔走するストーリーに、ともさかりえ、佐藤浩市らの熱演も話題となった番組である。
 ドラマでは、片山と冤罪を勝ち獲った真鍋との恋の行方にどんでん返しが待ち受け、衝撃的な真相が暴かれる展開だったが、なんと、オンエアから12年目の今、あのドラマにじつは真犯人がいたのではないかという噂がまことしやかに囁かれているのをご存じだろうか?
 
 ドラマの大まかなあらすじはこうだ(再放送などを楽しみにされる読者は、以下は読まれないほうがいいかもしれない)。
 「夕刊トップ」編集局に着任した片山は、ある日の法廷で無実を叫ぶ一人の男の姿に心を奪われる。 3年前、お笑い芸人の「青島ビンゴ」(中野英雄)を刺殺した容疑で拘留されている元調理師の真鍋である。 接見を繰り返すうち、彼に殺人の動機が見当たらないことや犯行にかかった時間に矛盾があることなどを突き止めた片山は紙面で「真鍋冤罪」のキャンペーンを展開し、見事に彼の潔白を証明する。 では、真犯人は誰なのか? そこがドラマ後半のポイントとなっていた。
 
 「何度もビデオを繰り返して見ているうちに、ある不審な人物に気がついたんです」そう語るのは、市井の研究家のY氏。 このドラマで真鍋の元妻・長谷川志穂を演じていた洞口依子のファンサイトを運営する人物でもあり、外部事情に詳しい。 Y氏はそう言って、取材記者にドラマの数話ぶんのビデオテープ(DVD未発売)を再生してみせる。

 最初に映ったのは、片山が逮捕前の真鍋の人物像を探るべく、いまは離婚して入院生活を送る志穂に面会するシーンだ。 片山が病院の個室に志穂を訪れると、志穂は底意の窺えないさわやかな笑みで彼女を迎える。 真鍋と志穂は一人娘を事故で失って夫婦関係に不和が生じ離婚となった。 にもかかわらず志穂は笑顔で言う。 「真鍋とはいつも会っているわよ。 最近は娘にばかりかまって来てくれないけど」。 彼女は精神のバランスをも失ってしまったようなのだ。
 
 「この柔らかい笑顔、これがくせものなんです」Y氏はそのシーンを巻き戻す。 「志穂が何かを知っている、という先入観は、ドラマで洞口依子をよく見る人になら、まず99%間違いなく植えつけられますね」 なるほど、娘を失い家庭も崩壊した女性の無垢にも思える微笑みは哀れをさそうが、いっぽうでどこか得体のしれない謎が隠れていることを暗示させる。 洞口なればこそのニュアンスと存在感だ。

 「ところが、彼女はシロだったんですよね。 あくまで、ドラマのストーリー上では」とY氏。 
「ストーリー上では」? 気になる言葉に質問を投げかける隙も与えず、Y氏は続いてべつの回のテープを再生した。 病室で一人、新聞に目を落とす志穂の姿が映っている。 広げているのは「夕刊トップ」で、真鍋の事件の再捜査を訴える記事が大見出しで載っている。 紙面から顔を上げる彼女の表情は前述の無垢さが薄れて意味深に翳っているのがわかる。 なるほど、これなら当時の視聴者が彼女をマークしたくなるのもうなずけるというものだ。 

 そして次に再生されたのは、釈放された真鍋が志穂を病院に訪れる場面。 病院の庭で編み物をしている彼女の前に現れた真鍋は持っていた花束を差し出す。 くもらせたままの表情を変えない志穂。 「体に気をつけろよ」とだけ言って立ち去ろうとする真鍋に、「これからどうするの?」と静かに声をかける。 

 「このやりとりから、視聴者は2人が何か重大な真実を共有していることを察します」Y氏は続ける。 「結果的に彼女はシロということでドラマは終わったわけです。 最初に登場したときの洞口依子はまるで少女のように無邪気な笑みを見せます。 視聴者の同情を惹くわけですね。 それが次に見ていただいたシーンでは、一転して深い『ワケアリ』な翳を漂わせます。 『疑惑の影』です。 ところで、このシーンでの洞口の表情は魅力的ですね・・・蛇足ですが」 たしかに納得のいく解説ではあるし蛇足もその通りだが、それにしても先ほどから気になるのは、Y氏の言葉の端々にある「ストーリー上では」「シロということでドラマは終わった」などの言葉である。 記者は素直にその疑問をぶつけてみたのだが… 「最後にこの場面を見てください」Y氏が次に取り出したテープには、最終回が入っていた。

 片山があらためて志穂を訪ねに来る場面だ。 「もう一度お話をしたいんですが」と切り出す片山に、今度は以前よりうっすらとした笑みをたたえながら「いいわよ」と応ずる志穂。 と、病院の周囲に張り込んでいる刑事の存在に気づいた志穂はおもむろに険しい表情になる。 「笑みも前の時からほんのちょっとだけ薄まっているし、表情も強張るというより引き締まる・・・いや、こういう微細な抑揚がほんとに魅力なんですよね・・・あ、話が脱線しましたね」どうもY氏の口調はときどき緩みがちになるようだ。
 志穂は娘を失った自分が真鍋よりも強く復讐の念をいだいたことや、それをなだめようとした真鍋に失望して別れることになったと話す。 

 「おかしいと思いませんか?」Y氏は記者の目をのぞきこんだ。 「この女性、自分が夫以上に殺人の動機を持っていますと、こうまではっきりと言っているんですよ。 それを真鍋がなだめたかどうかは、あくまで彼女がしゃべっているだけの事なんです。 嘘かもしれないじゃないですか」 -
---では真犯人は志穂だったのではないかと? 
 「確証はありません。 でも、彼女が実行犯で真鍋がそれをかばっている可能性だって、ありえるわけです。 なにしろ演じているのが洞口依子です。 このドラマの収録とほぼ同時期に、98年11月18日には黒沢清の映画『カリスマ』がクランクインしています。 彼女はそこできわめつけのミステリアスな女性像を演じています。 『タブロイド』での彼女と『カリスマ』での彼女とでは意味合いから何から並べるのがおかしいですが、『タブロイド』最終回で庭の木々にもたれる彼女の向こうから太陽が射しているところなんか、ゾクリとするような符号を錯覚してしまいます。 このドラマでの彼女からも善悪の不確かな空気が吹いてくるかのようで、いろんな空想を許してくれるんです」
---それは「空想」というか…
 「とにかく、再放送があったら、洞口依子に気をつけて見てください。 真鍋と再会するシーンの横顔なんかステキです」

 最後には真犯人説もそっちのけで熱弁をふるわれてしまったが、これから90年代のドラマがCSなどで再放送されることも多くなるだろうし、視聴者が思い思いの楽しみ方でそれぞれの目で真相を確認するのもいいかもしれない。

 


仰天!! 摩周湖の霧に宇宙人からのメッセージが??? 

この時期、神秘的な景観にいっそう魅力が増す北海道の摩周湖(阿寒国立公園)。 日本の名勝としても指折りのこの美しい湖にとんでもない事実が隠されていることが「宇宙交信

                              

1998年10月14日〜12月16日
フジテレビにて 21:00〜21:54放送 

伊藤由美子  脚本
河毛俊作 石坂理江子 水田成英 演出

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