『深紅』(2005)

洞口依子と南野陽子。
この2つの名前の並びは、ヨーリー・マニアにとってはけっこうおなじみのもの。
『時にはいっしょに』がそうでした。
『イルカに逢える日』や『マヌケ先生』も。
いやいや、男性ファンなら、もっとすぐに思い出すものがありますよね。
「GORO」の、え〜っと、1988年2月11日号。
タヒチでの、ぶっ飛ぶくらい美しいヨーリーをとらえたグラビアが載った号は、ナンノが表紙でした。

ヨーリーもナンノも、デビューの時期は、ほぼ重なるんですよね。
ヨーリーのほうが2つだけ年上なのだけど、かなり大人っぽい印象があったのは、
ヨーリーの、アイドルにはない(今で言うなら)「オルタナっぽさ」がクールだったからだけれど、
ナンノと彼女の周囲が、不可侵の神聖アイドル帝国を見事に築いていたということでもあると思います。
あと、もちろん、ハダカの有る無し。

ヨーリーとナンノ。
ヨーリー・マニアにとってこの作品は、要するにそういうことであります。

原作は野沢尚さんの、吉川英治文学新人賞を受賞した小説。
実際に起きた一家惨殺事件を基にした物語で、ひとりだけ修学旅行中で難を逃れた娘の旅先の描写から始まります。
この娘役は堀北真希ちゃん(私、この子の名前を最初「堀木たまき」だと思ってました。どうでもいいけど)。
友達と夜、部屋で怪談ばなしをしているところに、先生がやって来る。これがナンノ。
真実は話さない。「おうちの人が事故に遭ったらしいから、家に帰る仕度をしなさい」と言う。
わけもわからず、胸騒ぎにかられるように、ナンノ先生と2人タクシーに乗る真希ちゃん。
あ、このタクシーの運転手、小倉一郎さんです!
このタクシー道中4時間の不安感が、彼女のトラウマになって後々まで尾を引くことになります。

ヨーリーの出番は、ほんの数十秒。
殺人事件の犯人が逮捕されたあと、その娘を訪ねる警察の一人です。
突然のものものしい訪問者に茫然と立ち尽くす女の子に、傷つけないよう気を配りながら簡潔に状況を説明する刑事。
まさに、「ナンノ因果かマッポの手先」。

被害者の娘に付き添うナンノと、加害者の娘のもとに捜索に入るヨーリー。
じつに、なんというか、「GORO」の88年2月11日号の世界を微妙に引きずっているかも、と思うわけです。
とくにこの作品、被害者の娘と加害者の娘がそれぞれに背負った葛藤と、罪と憎悪をいかに乗り越えるかを描いており、
そこにもヨーリーとナンノをなぜかダブらせてしまいます。私だけなんでしょうが。

もう一度、ナンノ先生を見てみましょう。
タクシーの中、本当のことを告げられないで少女の隣に座っている先生。
途中、立ち寄った道の駅で買った缶飲料を差し出す先生。
思うように進まない道にいらだって運転手と口論する先生。
少しずつ育まれていく、少女の中の不安と恐怖。

…なんで、ヨーリーが先生じゃないの?と思ってしまいます!

これは、どう考えても、洞口大先生の出番じゃないですか。
ヨーリー先生ほど生徒を不安の淵に引きずり込み、一挙手一投足に悪い波動を感じさせる先生、いないじゃないですか。
堀北真希ちゃん、上手いんだよ。すごく上手いんだ、この子は。
だけど、横に座っているのがヨーリーだったら、その上手さは旨味に変わったんじゃないかと思うのであります。

このシーン、ヨーリー先生で見てみたいです。私の妄想はそっちへ突っ切ってゆく。
そしたら、隣には、やっぱり、あおいちゃんに座ってほしいよねぇ。
だったらタクシーの運チャンも光石研さんで、どげんですか?
おぉっ、すごいぞ。それは見たい。そのタクシーは最強だ。深夜割増で4時間でも、乗ってみたいと思います。

ありもせん話に字数を割きすぎました。
ヨーリーの刑事役、なんでなのか気になって、原作を読んでみました。
と、原作にもこの刑事は登場していて、
「保険体育の先生のような女性刑事」とあります。
え、もしかして…『呪怨』?あれから来てるのでしょうか?


2005年9月17日公開
野沢尚 原作 脚本 
月野木隆 監督
製作『深紅』パートナーズ、テレビ朝日、東映ほか

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