★ 下北沢よーりぃ愛をこめて
(2007年6月10日 洞口依子さんサイン会&朗読会&パイティティ・ライヴ)

6/10、東京は下北沢で行われた
依子さんのサイン会&リーディング&ライヴ
について、ご報告いたします。

雨でした。雨の下北沢。だいたい、下北沢って、どこ?
というくらい東京音痴な私が京都を出発したときからして、すでに曇天模様でした。

ところが、サイン会の時間が迫るとともに、雨が少しずつ止んでいき、
下北沢駅に、めでたくパイティティのサウンドが鳴り響いたのです!

そこから会場の書店フィクショネスまで、南口商店街をパイティティが練り歩きました!
不思議な光景でした。まるでパイティティのPVの中にいるみたい。
奇妙な底知れぬ活気の渦巻くあの商店街が、
どこかフェリーニの映画のセットのようにも見えて。
軒を連ねる大小のお店が、縁日の屋台のよう。
そしてサーカスの音楽がそうであるように、
パイティティの音楽はすごく楽しくてどこか哀しい。

フィクショネスは10人も入れば満杯になるような書店。
活字にならなければ爆弾になっていたとしか思えないような風情の書物が並び、
その一角に洞口依子さんが腰かけて、サインを寄せてくださる。
ひとりひとりの目を見ながら、丁寧に。

私もいただきました。
ワタシ…yumekageと申します。あの、HPを…
えぇ〜!来てくださったの?と柔らかく手を包みながら、
どこか、私が来ることをご察知だったかのようでもある。

書店を出たところの路上で、パイティティのライヴ。
「上を向いて歩こう」もとびだす。
タケシさんのギタロンとカオルさんのブラシのスウィングが爽快。
石田画伯の演奏を聴いてしまった私は、もう「ウクレレ弾きます」なんて言えません。
最初はウクレレをアンプつなぐことを躊躇していた依子さん、
ディレクター、カッパさんのひとことで、プラグ・イン。
すべてが、ふわぁっと、空に放たれる。
すると、突然、空が、笑うように晴れ間を見せる。

そのあとがまだ続きました。
風知空知(フーチークーチー)というライヴのできるお店へ移動。
テラスがあって、店内にはアレサ・フランクリンが流れたりしている。
まず、依子さんのリーディング。
椅子に座って、『子宮会議』から、数箇所を抜粋して朗読。
私が思い描いていたのとはちがう、子宮の語り口。
目の前でカメラをまわす夫カッパくんの笑い方を真似て読む依子さん。
子宮との会話がなくなった段で、声を詰まらせる依子さん。
それを聴いていたときは思わなかったけれど、今こうして文章にすると、つらい。

依子さんのあいさつの途中、急に私の話題になり、あわててしまう。
ご紹介いただいたので立って挨拶したが、しどろもどろになりました。

そこからもう一度、パイティティの演奏が始まる。
「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」「イン・マイ・ライフ」のカヴァー。
なぜだろう、『ラバー・ソウル』の歌って、哀しいことがあって、
その哀しみを後にしたときに聞くと、すごく沁みる。
依子さんはステージ下のテーブル席のソファに深く腰かけてウクレレを弾く。
その姿が、ウェブで見たパイティティの映像よりもずっとリラックスしていい。
ときおり顔を上げてどこかに視線を泳がせるので、なにがあるのかと追うと、
テラスの外に広がる、ようやく手にした晴れ間でした。

「あ〜、この空は、沖縄まで続いているんだなぁ、と思った」とMC。

「具志豆腐」(依子さん作曲の沖縄調の曲)も含むレパートリーを演奏し終えて、
依子さんは私たち一人一人のところにお話をしにきてくださいました。
これは、来た一人一人が心に刻む宝物ですね。

みんなで記念写真(すごいな)を撮って、そこでいったんお開き。

あとで、演奏中の依子さんを撮った動画を見ました。
やはり、ものすごくいい演奏でした。
心が音楽にくっついているような、自然なグルーヴがあって。

パイティティは、聞かせれば絶対にファンが増える、と確信しました。

画像は依子さんのブログ
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★ 「洞口依子的」ということ

残念ながら当日行けなかったかたに、ひとつ説明させてください。

今度のイベントはたしかに発表から実行までに間が短く、多くのかたが、
「行きたいけど、その日は…」と悔しい思いをされたことと思います。
私も、えらく急だなぁとは思っていましたが、今回のイベントについては、

思い立って、すぐに行動する

ということが重要だったと、依子さんがおっしゃっていました。
つまり、大勢の人を集めて大規模なサイン会を開くことより、
「パイティティが下北の町を練り歩けばおもしろいんじゃないか、じゃ、やろ!」
という衝動を、なるべく新鮮なまま行動に移すこと、が大事だったというわけです。

そして当日。
雷(「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」か!)を伴う大雨で始まり、
下北沢駅の前も傘をさして早歩きする人ばかり。
こりゃあ練り歩きはないな、と思っていたのですが、
時間が近づくにつれ、雨がやんでいき、しまいには晴れ間までのぞきました。
そして往く人々の誰もが振り返って見た練り歩き。

なんと洞口依子的な日。
洞口依子さんに会う日、というより、洞口依子みたいな一日。

そのときに、私はハッと思い当たりました。
あぁ、そうなのか。この人は、すべてこうやって表現するんだ。
『子宮会議』も、あれは、「洞口依子について」書かれた本ではなく、
「洞口依子のような」本なんだ。
だからあんなに心を動かされるんだ。

ライヴで爪弾いてくれた「イン・マイ・ライフ」も、
「洞口依子が演奏する」「イン・マイ・ライフ」ではなく、
「洞口依子のような」「イン・マイ・ライフ」だったんだ。
そう思ったとき、レノンの素晴らしいこの歌が、
まるで依子さんのために書かれたかのように響いたのです。
このときの演奏はウクレレだけでしたが、
たしかに歌が聞こえてきたのです。言葉もない、歌が。

そしてエンディングとともにギタロンのタケシさんがアドリブで放ったシャボン玉が、
ほんの少しだけだったけど宙を舞って、すぐにはじけて、わっとみんなが歓声をあげて、
私は、あまり感傷的なことを書くのは本意ではないのだけれど、
ちょっと涙ちびっちゃったのです。

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