採録

『超即興的言詩和音暴走トークライブ』

矢作俊彦 x 洞口依子 「暴走トーク」 






2011年8月16日に洞口依子さんが主催したイベント「超即興的言詩和音暴走トークライヴ」での矢作俊彦さんとの「暴走トーク」を採録いたしました。
元の動画は、依子さんの公式サイト「のら猫万華鏡」の
こちらと下記のYouTubeリンクにアップロードされています。

YouTube 洞口依子×矢作俊彦トークその1  洞口依子×矢作俊彦トークその2 

@ YouTube
洞口依子×矢作俊彦トークその1


洞口 「(矢作氏と同様に腕と脚を組んで座っているポーズを)マネしたの。
すごい!(矢作さんの)靴が。マフィアだもん」

矢作 (腕を下ろし脚を組むのをやめて)「手を下げてるよ、俺はこう、手を下げてる」

洞口 (急いで腕と脚を下ろす)

矢作 「宍戸錠と話をするときはね、手を下げてないと殺されるんだよ(笑)」

洞口 「(ワインを開けながら)こないだ、なんか殺されかけてませんでしたか?」

矢作 「殺されました。」

洞口 「ねぇ。すごいびっくりしました」

矢作 「納富君が拳銃渡すもんだから吃驚しました」

洞口 「あれ、納富さんの拳銃だったの…ま、一杯どうぞ」

矢作 「(ボトルを見やって)なんなんだよ、それ(笑)」

洞口 「これ?なんか、ミック・ジャガー・プロデュース、『サティスファクション』。ベロ。高いんですよ…まぁ、矢作さん、アメリカン…カリフォルニア・ワインで」

矢作 「そのわりにはちょっとしか入れないのね」

洞口 「もっと欲しいの?」

矢作 「このくらい入れるもんだぜ?銀座に勤めたことないから、わかんないだろうけどね」

洞口 「な〜んでワタシが銀座…銀座に勤まったらこんなとこにいませんよ」

矢作 「そらそうだよな」

洞口 「はいっ、みなさんお待ちかねの暴走トークの時間がやってまいりました」

(拍手)

洞口 「矢作俊彦!イェイ!」

矢作 「3分の1くらいは帰っちゃったよ」

洞口 「帰ってないですよ。すっごい増えてるよ、ぜんぜん大丈夫だよ。矢作さん、人気者なんだよ、本当は。
すごいじゃん、最近、ツイッターなんかやっちゃって。どうしたの?ふふ」

矢作 「源ちゃんにダマされたんだよ」

洞口 「ウソ?源ちゃんにダマされたの?」

矢作 「うん。高橋源一郎にだまされたの」

洞口 「また、なんで?仮面ライダーの話とか…」

矢作 「いや、いろいろ」

洞口 「あ、そうなの」

矢作 「アイツは、ホラ、中核だからさぁ」

洞口 「(笑)またそういう話に!」

矢作 「すぐ人をダマすんだよ」

洞口 「あ、そう(笑)でも、中核って女にモテそうな感じしません?」

矢作 「モテないよ。モテるわけないじゃん。すぐ人をダマしてねぇ、前に出して後ろから逃げるんだよ。」

洞口 「あ、そう、へぇ〜…って言う矢作さんはどうなのよ、最近?ツイッターの書き込み見てると、すごい盛り上がって…青山監督、なんか賞獲ったの?」

矢作 「あ、賞ね。ゴールデン・ジャガー賞」

洞口 「ゴールデン・ジャガー賞っての、あれ?(笑)あ、ホント、へぇ〜。なんか、『映画撮れない撮れない』なんて言ってて、しっかりやってんじゃん」

矢作 「だから、みんなで…源ちゃんとふたりでお金を出し合って、東映でゴールデンジャーっていう着ぐるみを作ってやろうかって思ってるんだけど」

洞口 「あ、『ゴールデンジャー』っていうのね」

矢作 「それで、ゴールデンジャー、レッドがいいかブルーがいいかっていうと、『レッドがいい』って、やっぱり主役がいいみたいだけど」

洞口 「すご〜い。そういう人なんだ。ワタシ、青山監督ってね、あんまり存じ上げないんですよ。こないだもほら、(矢作さんから)電話かかってきたじゃない」

矢作 「ぼくもよく酒飲むんだけど、彼の映画、観たことがないんだよ、じつは」

洞口 「えぇ、そうなの?(笑)」

矢作 「観たら嫌いになりそうじゃない。飲んでるぶんにはいいけど、映画観たら嫌いになりそうじゃん」

洞口 「そのわりには、すごいマブだよね。すごい仲好しだよね。だって、このあいだ、矢作さんの誕生日のときに、誕生日の本人自ら『飲みに来ませんか?』って電話あったじゃない?あんときに奥で『バナナ・ボート』を大絶叫して唄ってたよね」

矢作 「あいつ、そう」

洞口 「あぁいう人なの?ワタシ、そういうイメージまったくないんですけど」

矢作 「3杯以上酒飲むと人格が崩壊する。だいたいね、パンツ1枚になるのはなかなかないけど、上半身はハダカになる。」

洞口 「ぜんぜん見えませんねぇ」

矢作 「そのころ奥さんから電話がかかってくると、椅子の上に正座して、携帯電話に謝る」

洞口 「(笑)おもしろいなぁ。なんか、いつもホラ、黒沢清さんと一緒にいるときにお会いするのがほとんどなんで」

矢作 「酔っ払うとねぇ、横にいる全然知らない人に、『ボクの奥さんは有名な女優なんですよ』って言うよ」

洞口 「えぇ〜(笑)カワイイね」

矢作 「可愛いよ」

洞口 「可愛いじゃん。可愛いヤツなんだ…で、なんだっけ?賞を獲ったとか…」

矢作 「んで、なんの話をするの?(笑)」

洞口 「えぇと、訊きたいのはさ、なんで矢作俊彦のような…『ような』って言い方は変だよね、そういう日本語ツッコまれるから…すごいじゃない、ツイッターであんないっぱい書いちゃって。ゴダールを福岡まで観に行って。福島から遠く離れて何を想う、みたいなことを書いてたじゃない。あぁいうものをなんで突然書き始めちゃったわけ?」

矢作 「3.11以降っていうか、3.11でいろんなものがもちろん変わったわけなんだけど、3.11で一番ぼくが驚いたのは、今の日本の若い人っていうか、ぼくより年下の人間たちが…誤解を恐れずに言えば、あのぐらいの事でなんでそこまで吃驚するかな、って話だよね。
   つまり、ぼくたちの時代って、戦争が終わったばっかりで、もちろんぼくは戦争が終わって5年して生まれたから、戦争そのものは知らないけれど、たとえば横浜で生まれて、焼け野原はいっぱい残ってたし…焼け野原ってヤツ…そこで遊んでると人骨なんてのが出てくるのは普通だったからね。
   で、市電で小学校に通ってるあいだにも、焼け跡がいっぱい残ってるわけですよ。つまりそれは空襲の跡で、横浜で総合で20万人以上死んでるわけだから、爆撃で20万人死ぬってことはね、10年や20年、人骨は簡単に出てくるわけだよ。骨もないまま葬式したとか、そういうのは普通のことで、ぼくにとっては全然驚くことじゃないわけね。それが普通だった時代があって、それは世界中ずっと続いてるわけですよ。アメリカ軍がいる以上…『アメリカ軍』って言ってもしょうがないか(笑)」

洞口 「(笑)『アメリカ軍』」

矢作 「とにかく、世界帝国軍が存在する以上は…それはローマでもおんなじですよ。先史ローマの時代からずっとおんなじね…人間が戦争する以上はそういうことはずっと起こってるわけですよ。たとえば、フランスのパリから250キロぐらいかな、ドイツ方向に真東にパリから行ったあたりに、ヴェルダンって場所があるんだけど、それは第一次世界大戦中にヴェルダンに防衛線を張って、フランス軍が塹壕を作って塹壕戦を戦ったわけね。そこにドイツ軍が攻めて来て、その塹壕で40万人死んでるわけですよ。40万人死ぬ、それも4キロ四方で40万人死ぬんだよ?そこに行くと、10キロ四方くらいの大地に墓石がバーッとあって、もう墓しかないわけ。もう、寒気がしますよ。で、ヨーロッパ人ってそういうものをずっと遺してるし、ヨーロッパ人てのはローマ時代からそれをやり続けてるから」

洞口 「なんか、遺すよね、あの人たち」

矢作 「そうね。忘れないように。日本人はすぐ忘れちゃうから」

洞口 「ほんとだよね。ほんとにそう思います。いや、だから、たしかにね、べつにのめり込んでるわけでもないんですよ。ただ、矢作さんの見た昔のそういう風景とかは、見てないんだよ、私たちって。だって、べつに焼け野原なかったし。せいぜい渋谷の駅前で、傷痍兵っていうんですか、傷痍軍人か。アコーディオン弾いて…あとはまぁ私は横田基地が近かったから、ちょっとそれはその名残っていうか、それはそれこそアメリカ軍のものだから」

矢作 「でもね、そういうのって想像力の問題で、人間の平和っていうか安穏な生活っていうのは、絶えず地獄の釜の蓋の上で行われてるわけですよ。だから、いわゆる津波の被害に関しては、ぼくはそんなに吃驚しなかった。吃驚はするけど、あぁこういうこともあるよな、っていう」
 

@ YouTube
洞口依子×矢作俊彦トークその2


矢作 「…たいしたことじゃないって言うとまた怒られちゃうけど、震災の被害者と被害者の救済っていうのは、もちろん優先されるべきなんだけど、震災の被害そのものと原発の被害そのものは分けて考えないと いけない。で、震災の被害に遭った人はもちろん気の毒だけど、それは要するについ昨日起こったバラバラ殺人事件の一斗缶に一緒に詰められた人も気の毒だし」

(客席からの笑い声)

矢作 「笑っちゃいけないと思うよ、それ」

洞口 「笑っちゃいけないけれども、(例え話として)よく出てくるなと」

矢作 「気の毒だし、御巣鷹山で落ちた人もみんな気の毒だと思うよ」

洞口 「もちろんそうだと思いますよ」

矢作 「その数が多いからって、特別扱いしちゃいけないというか、特別に考えるのはどうかなと思う。それは、日本経済に対するダメージとか考えれば全然べつだけどね。それは政治家の考えることでぼくらの考えることじゃないと思う。
          で、福島の原発の問題ってのはべつだと思うよ。それはべつに考えなきゃいけないと思う。つまり、あの被害者っていう人たちは同時に加害者でもあるわけですよ。で、その電気を作った人間もぼくらも加害者であるわけですよ。津波の被害で死んだ人たちは圧倒的に一方的に被害者で、あれはどこにも加害者は存在してないんですよ。 つまり、宮城・岩手のね…福島はあまり行ったことないからわかんないんだけど…宮城・岩手の海辺の防波堤・防潮堤っていうのは、あれは世界にも類をみないくらい大きくて頑丈なの。たとえばね、なんとか高田ってあるでしょ、陸中・・・」

洞口 「陸前高田」

矢作 「陸前高田。あそこの街に行ったときに、ぼく驚いたんだけど、あそこに松原がずっとあって、たいへんきれいな松原で、そこに砂浜があって、岩手の子供たちはかならずあそこに海水浴に行くんですよ。いわゆる、湘南海岸みたいに彼らにとっては有名なわけ。海水浴場があるんだけど。その松原の裏側、後ろ側に、街と隔てて、幅4.5メートル、高さ8.5メートルの、コンクリートの塀があるわけ。街と途切れてるわけ、景色が」

洞口 「ほんとにそんなに大きいんですか?」

矢作 「そう、極端に大きい。たとえば、名前忘れたけど、とにかくもっと大きな塀もあったわけ。それを簡単に壊して簡単に波が乗り越えてきたわけね。で、それに関してはね、気の毒だけど、なんか、しょうがないよなとも思うわけ。もし俺が家族なくしても、誰を恨むもんでもなく、しょうがないよなって思うよね、それはね」

洞口 「う〜ん、それはね。そういうのもあるだろうけども」

矢作 「たとえば、ぼくの親戚は何人も横浜大空襲で死んでるけど、だからってアメリカ軍を恨んだことは一回もないしね。単にアメ公が嫌いってだけでアメリカ軍はべつだから」

洞口 「(笑)アメ公、嫌いなの?」

矢作 「嫌いだよ。アタマ悪いんだもん」

洞口 「あははは」

矢作 「で、だからそういう問題じゃなくて、福島はべつに考えるべきだと。で、いまこれを言うと人から嫌われるからみんな言わないけど、言わなきゃいけないなと思うわけ。つまり、あれは、ぼくもあなたも、あの電気を使った我々も、あの税金をジャブジャブジャブジャブ使って暮らしてたあの連中も、みんな被害者であり加害者なんだよ」

洞口 「なるほど。いいこと言うね」

矢作 「う〜ん・・・」

洞口 「嫌われちゃうよね」

矢作 「まぁね(笑)」

洞口 「でも、いまおっしゃったことは、なんかわかりますよ」

矢作 「とくに、これだけ明らかになって、たとえばね、50億かに1回起こるか起こんない事故だって言うけど、自動車事故は何回に1回起こるか・・・正確な数字は知らないですよ・・・でも、自動車事故よりも、頻度は飛行機事故のほうが少ないって言うわけだよ。だけど飛行機事故のほうがたいへんなのは、飛行機事故はいったん落っこったら死んじゃうわけですよ、確実に。いっぺんに300人から500人死ぬわけでしょ。自動車事故は死なない可能性も非常に高いわけですよ。鞭打ちになったり手首骨折したり、その程度で終わることが、そっちのほうが多いわけでしょ?そういう可能性で言うと、それよりはるかに頻度が低かったとしても、やっぱり原発は間違ってるわけですよ。なぜかって言うと、原発は1回起こればこれだけの事故になるわけだし。しかもこれだけ地震が頻発する国に、活断層の多い国に、原発が置かれ ている。そんなのはね、誰がどう見てもおかしいよ」

洞口 「なんでだと思う?すごい不思議。アメリカに敗けたから?だって、それまでは、どうやって電気を起こしたの?って話じゃない?」

矢作 「う〜ん、あのね、中曽根康弘って人がいて、中曽根(元)首相は海軍の軍人なのね。東大を出て、主計かな、彼は海軍で青年将校として終戦を迎えたときに、日本の敗因はエネルギー政策だとわかった」

洞口 「へぇ!」

矢作 「で、エネルギーをなんとかしなきゃいけない、エネルギーをなんとかするには、この資源のない日本で、アメリカにガソリンを止められても石炭を止められても電気を作り続ける・・・」

洞口 「それが原子力だったの?」

矢作 「そうそう、原発だったわけ。しかも、同時に、それをやり続ければ、潜在的に原爆を作る能力を維持できる」

洞口 「そうか!(映画『太陽を盗んだ男』での)沢田研二になるわけか・・・」

矢作 「しかもね、中曽根はそこで、まぁお金もらったかどうか知らないけれど、そこで終わってたんだけど、そこに田中角栄ってヤツが飛びついたわけ。『これはゼニになる!』と思って!」

洞口 「(笑)あ〜、なるほどねぇ」

矢作 「で、田中角栄は、もう、ゼニにしまくったわけですよ。それで、中曽根に囁かれた『アメリカの力を得ずに原発を運転し続ける方法』はないか、オーストラリアのホーク(元)首相とかたらって、東郷ナントカさんっていう、当時の電源開発公団の東郷さんを使って、ホークとオーストラリアのウランを安定供給する条約を結ばせたわけですよ」

洞口 「わたし、聞いてないよ」

矢作 「あ、そう?で、その直後に、ホークと田中角栄はおんなじロッキード事件でパクられるわけ」

洞口 「なるほど!つながるねぇ!」

矢作 「だから田中真紀子は、あれはCIAの陰謀だってずうっと言い続けてるわけ。たぶんそれはほんとだと思うよ。(客席からの笑い声に)いや、笑い事じゃなく。それはほんとだと思いますよ」

洞口 「つながるねぇ」

矢作 「うん。アメリカが日本を指揮下に置きたいし、そんな勝手なことをさせたくない。そんなつまんない事をする首相はみんな飛ばしたい。田中角栄はそんなに反米とかいう問題じゃなくて、ゼニがほしいからやったんだけどね、間違いなく。それはね、そういう時代があったわけですよね。で、原発はどんどんどんどん大きくなっていって・・・『原発における権益』はね。で、権益が大きくなれば、そこから発生する金も大きいし、地元に流す金で15兆とか」

洞口 「すごいねぇ」

矢作 「15兆のうちの60%は、地元の懐柔費ですよ。菅直人が浜岡原発を止めたときにね、馬鹿なマスコミがインタビューに行くじゃん」

(動画はここまでです)
2011年8月16日(火) 渋谷公園通りクラシックスにて


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洞口日和