鬼ユリ校長、走る!第8話 がんばれじいちゃん』(1996)

樹木希林さんが「花巻市立太陽小学校」の校長先生を演じた人気シリーズで、
洞口依子さんはこの第8話「がんばれじいちゃん」からレギュラーとして参加しました。

ドラマのロケ地となったのは花巻市立前田小学校。
あえてリンクは張りませんが、HPに当時のエピソードがまだ掲載されてあって、
小林由紀子プロデューサーのコメントなどもあります。
また、校舎内を紹介する写真に、このドラマでも登場する職員室や、
洞口依子さんが子供たちと一緒に下りてくる階段もあったりして、
卒業生でもなんでもないのに、妙に懐かしくなったりしますね。

依子さんの役は、産休補助のめぐみ先生。
下宿先が花巻市内のわんこそば屋で、出前のバイクに乗って登場します。
近くにいた校長に話す間も与えずしゃべって、「おばさん、校長室どっち?」。
職員室では綾田俊樹さんの教頭先生に、
「あ!こないだパチンコ屋で隣りでフィーバー出してたオジサンだ!
この人、びっくりして呼吸困難におちいって、アタシが店員呼んであげたんですよ!」

それで、「めぐみ先生もパチンコなさるの?」と校長に訊かれて、
「いやぁ、『セミプロ』の、『セミプ』、この『プ』!、『プ』ってとこですかね〜!」
ちょっと「もと新人類」、つまり「元シン」と呼べそうなキャラクターなんですが、
天真爛漫で悪びれたところがない明るさが勝っていて憎めない。

ほぼ全編、満面の笑みを浮かべる依子さんが見られます。
いつもの気だるい視線は完全封印。
目なんか、ほとんど一本線で描けるみたいに笑いっぱなしです。
こういう依子さんも、また見てみたい。

この時期、ちょうど『勝手にしやがれ!!』の『黄金計画』あたりと重なる時期だったはずで、
髪型その他、同作での由美子役と通じる部分も見受けられるのですが、
花火を持ち替えたとでも言うんでしょうか、回転花火と筒花火くらいの違いがあります。

他の先生たちに比べても、同僚には渡辺満理奈さんもいるのに、
依子さんのめぐみ先生のほうがずっと子供っぽい印象。
教え子の女の子と橋の上で会話するとってもいいシーンも、
友達どうししゃべっているみたいな、子供の目線が自然で微笑んでしまいます。
破天荒な新任、というニュアンスとはちがいますね。

授業が終わってからも、「久しぶりに先生やったから、肩こっちゃった」と独り言。
なにごとにも、子供に対峙するような気持ちと姿勢で臨む人です。
職員室での赴任のあいさつなんか、入学式から教室に足を踏み入れたばかりの1年生に
呼びかけているかのよう。非常にテンションが高いです。

このテンションの高さは、校長と一緒の場面でとくに度合いを増しているように見えます。
依子さんがひとしきりしゃべったあと、樹木希林さんが「なんかもう、めんどくさくなっちゃった」
とホンネをつぶやいてしまう、身も蓋もなくて心地よいクール・ダウンと、
それに救われたかのように「わたしもそうなんですよ〜」と乗っかる依子さん、
そして呼吸を合わせて、ふたりして「でもね〜」と反省するまでの運び、
この職員室での二人の場面がとっても好きです。

わんこそば屋で、三木のり平さんをまじえた食事会。
ここでは依子さんが給仕さんの衣装で、三木さんにそばを注ぎます。
これもかなり珍しい設定ですし、こういうのって、
本職の人に習うリハーサル風景を想像するのが楽しいです。

なんにせよ、私が印象に残ったのは
「『セミプ』、『プ』、この『プ』ってとこですかね〜!」のセリフ。
バラエティなどでちょっとした仕切りが回ってきたときの依子さんを思い起こしました。


猪原達三 演出
高橋正圀 脚本
林光 音楽
小林由紀子 プロデュース

1996年1月21日21:00〜21:54
フジテレビ 「花王ファミリー劇場」枠にて放送

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