『お祭弁護士・澤田吾郎 青森ねぶた祭〜徳島阿波おどり、日本縦断二大祭り1600kmを結ぶ連続殺人!』(2002)

え〜、日本三大祭。みなさん、言えますか?
天神祭、祇園祭、あとひとつは…
なんか古畑任三郎みたいなスポット浴びてそうな書き出しですが、弁護士・澤田吾郎なら朝飯前の問題でしょう。
なにしろこの弁護士、2002年の夏に青森のねぶた祭と徳島の阿波踊りをツアーしてるほどのお祭好き。
これ、本当にロケしたんですね!
どちらの祭も8月初旬に開催され、オンエアが8月31日ですから、ドラマのスケジュールというのも大変だ。

ねぶたの群衆の中で起きた殺人事件が、徳島へ展開する物語で、依子さんの役はテキ屋のおねえさん。イカ焼き屋台です。
商売道具をライトバンに積んで、タイトル通り、今日はねぶた、明日は阿波と、全国の祭を旅する身。
冒頭から、「焼きたてのイカ焼き、プリッとしてておいしいよ!」と声を張り上げています。

ほとんどのシーンをオーバーオール姿で出演、というのも珍しいですし、
おでこのセンターで分けた肩より少し長いストレートの髪に、鉢巻代わりのヘアバンドを乗っけるように巻いているのが、
ちょっとネイティヴ・アメリカンというか、ヒッピーっぽいセンス。
祭から祭を旅して生きる女性像を、70年代風味のコンセプトで演じているのが洞口依子さんらしいです。

18歳で駆け落ちしたという設定が物語るように、故郷の町を出奔した「はみだしもの」、共同体になじめない人間の雰囲気があります。
このへん、洞口依子というキャラクターが生かされていて、生まれた港町でも、漂泊の情感を画面ににじませます。
いっぽう、お祭弁護士役の高嶋政伸さんはこれとは正反対で、どこに行ってもアットホーム感を溢れさせる人なのですが、
旅先では彼もまたその地に「やって来ている」人間。依子さんの漂わせる根無し草の孤独感を癒すほどの力はありません。
という次第で、このふたりが歩く徳島の街並や祭の光景に暮らしのにおいがあればあるほど、
そこに定着しない依子さんの姿がやけに際立つという、ヨーリー・マニアならではの楽しみかたのできるドラマです。

ところで、ドラマでも映画でも、人物の若い頃の写真に、実際にその俳優の昔の写真を使うことがありますが、
あれはやはり、スタッフが「このくらい前の写真を持ってきてもらえます?」などとお願いするんでしょうね?
よく似た子役の写真で代用するのではなく、あえて本人の肖像にこだわるのは、
演出の意図や(子役の)予算の関係などの理由からなんでしょうか?

この作品では、後半への重要な流れで、洞口依子さん演じるヒロインの高校生時代の写真が出てきます。
やや色あせたカラーの、おそらく修学旅行の団体写真で、写っているのは依子さん本人です。

この写真に写った依子さんなんですが、手元にあるGOROグラビアで一番古い16歳少し前のときよりは大人っぽく、
阿蘇で撮られた18歳のときよりはあどけない。単純に考えると17歳くらいかな、と思うのですが、
この年代の女の子って、一瞬ごとにいろんな表情を見せるので、やはり特定できません。
ただ、見た印象からいうと、目元の涼しさかもしれないけれど、どこか冷めたような雰囲気があります。
この時期のGOROでのグラビアでは、はつらつとした明るく健康的な瞬間が逃さずつかまえられているので、
それと比較すると、どちらが本当の姿ともつかない二面性を垣間見る思いがしますね。
このドラマでは、高校時代の美術の先生に恋心を抱いていたという設定になっていて、この写真での依子さんから、
いろんな想像をめぐらせてしまいます。

それから、阿波踊りの着付けで徳島の街を大移動するクライマックス、ここも見ものです。
またべつのハナシになっちゃうけど、依子さんって、お遍路さんの格好をしたこと、ありましたっけ?
白い衣に菅笠、金剛杖…ものすごく似合うと思うんですが。
あと、巫女さん。これも見てみたいです。神性を感じるのかな?


2002年8月31日 テレビ朝日系列 21:00〜22:51
「土曜ワイド劇場」枠にて放送
岡本弘 監督
小森名津 脚本
「この人を見よ!」へ

←Home