洞口依子さん、沖縄を語る
(メールでインタビュー 2009年2月22日)

約2週間の沖縄滞在から帰ってきたばかりの洞口依子さんに、
メールでインタビューしました。
この間、いろんな思いで彼女からの便りを受け止めていたファンの、
いわば「ご報告」。
「ヨリコ・ドーグチ・リポーツ。」
 







管理人 まず、今回沖縄に行こう!と思いたった経緯は?

洞口依子さん 
なんとなく。心の蛇腹にいろいろ詰まってしまったのかな。
心の洗濯ですかね。
あと病気の5年生存率ってのが、5年越えを迎えたからです。
2月10日くらいにオペしたので。
まぁいろいろ。骨休め。自己と向き合う時期。
あとは友人の事務所が移転したので(外人住宅に)それを拝見しに。
  
管理人 沖縄旅行のとき、荷物はどのくらい持っていきますか?

洞口依子さん 
今回はリュックひとつ。とパソコン。

管理人 「修行」、とのことでしたが、どんな一日を過ごしていたのですか?
 
洞口依子さん 
修行ってのは冗談です(笑)。
いや、結果的に修行だったのかな。
行く予定のない、宮古島に行きまして、
そこでまぁ自己と向き合ういろんな出会いや出来事がありまして
たったひとりで、いろんな孤独を感じることで
まぁ極限まで自分を責めてみたり。
朝早く起きて、規則正しく生活する。
自分のためだけじゃなくて人のためになにかすることによって
それが実は一番自分のためにあることだったってこと
そういう毎日を送りました。
具体的には 豆腐屋の大鍋を洗ったくらいです。

管理人  今回、冬の沖縄で、冬の海になにか感ずるものはありましたか?

洞口依子さん 
冬といってももうあったかいです。20度以上はありますから。
お日様次第で泳ぐことも可能。冷たいけど。
宮古では泳ぐことが出来ました。
静かで独り占めできるのがいいけど
静かでいる海に入ってゆくのはどこか御祓じゃないけど
なんだろう、手足をつかるだけでも、気分がスッと洗われる感じ。
しかも、少し靄がかっていて、なんともいい感じでした。
お休み時期なので、静かに見守っていたい海の雰囲気もありますね。
いずれやってくる観光客でにぎわいを見せることを想像すると、静かにみつめていたい。


管理人 猫と1週間離れたら、もう猫のことしか頭にない状態になりませんか? ある意味、それも修行?

洞口依子さん 
幸いというか、沖縄はしまねこの宝庫。
あちこちでのら猫をみかけます。
そのたびに彼女(ニャーリー)を思い出すのですが、まぁなんだろう。
よその猫みてわが猫愛するって感じ?
わけわかんないな。あはは。
今回、ヨシミんちで飼ってる猫、三吉を手なずけたのが進歩でした。
三吉は雄猫で他人には絶対よってこないのですが
逃げ回っているうちにヘトヘトになったのか
じっくり会話して向き合っているうちにからだをこすりつけてくるようになり、
果ては抱っこさせてくれました。
でも、すぐに我にかえって
「俺はこんな猫じゃない!ないちゃーねーねーになんか抱っこされる島猫ではない!」
みたいに腕からするりと逃げてゆきましたけど(笑)。

管理人 依子さんのうちなーぐちは、ご自分で採点するとしたら何点くらいですか?
 
洞口依子さん 
いい加減です。20点。
しかも、うちのパイティティ口琴プレイヤーのヨシミなどは
うちなーぐちを使わないし、(那覇の都会育ちなのに!)
ベタなうちなーぐちを聞きたいなら
おじいおばあとゆんたくするのがいいでしょう。

管理人 依子さんって、子供の頃、先生や友達の物真似が得意な子だったのでは?
方言や外国語を、物真似感覚でマスターできちゃうセンスがあるのでは?

洞口依子さん 
まね?あまりしたことないな。
心の中でひとりでやってたことはあるけど。
たしかに、物まね感覚はあるかも。
今は人のまねが好きでよくやります。
というか、誰誰さんがこう言うのよって話を
その人の口まねで話してこそ、うまく人に伝えられるかなと
そういう思いだけなんですけど。
よく似てるので笑ってくれますね。
そう思うとみんな特徴あるよね。
職業柄、観察するのが癖だからなのかな。
外国語も文法はめちゃくちゃだけど、なぜか通じます。
それはノリと真似っこ的な発音にあるのかも。

管理人 依子さんが最初に沖縄を意識したのは?

洞口依子さん
海洋博ですかね。
どこの島なんだろうって思った記憶があります。
あとは沖縄戦。

管理人 こんなに沖縄に通うようになる以前には、どんな沖縄像を持っていましたか?

洞口依子さん 
土着的なイメージ。
日本なのに日本から忘れ去られてるふりをしいたげられてるイメージ。
基地しかないイメージ。荒くれ野郎なイメージ。
よそものを受け付けないイメージ。


管理人 沖縄の文化が、音楽や映画などで広く知られるところとなりましたが、
沖縄の人たちは、それをどうとらえているのでしょう? また、依子さんの意見は?

洞口依子さん 
どうなんでしょうね。
沖縄のミュージシャンも、沖縄のある意味ステレオタイプな歌詞を歌うときがありますけど、
映画もそうですが、どうなんでしょうね。
知ってほしいだろうし、だけど、わかりあえるかといえばそこは難しいでしょうね。

かれらはいまでも日常で戦争が残したいろんなものと向き合っていかなきゃならない現実があるし
でも、そういうとこをホントは伝えていきたいんじゃないのかな。
実際、おじいおばあや両親からは戦争のことをあまりというか
ほとんど聞かされて育ってないのが事実であるように
苦しいことは自分の胸のうちに持っていたいって思いもあるのかもしれない。
 
沖縄の文化をもっと知ってほしいという思いは「正しく伝わること」で強くあると思いますよ。
だから県産映画などを作るわけだから。
このへんは沖縄の監督のハヤシに聞くといいかもね。

管理人 今回、発見した事はなんでしょうか。

洞口依子さん 
発見した事?
沖縄はやっぱり独特の文化によって生き続ける島なんだなって
思いがまた強くなりましたね。
でも、改変の時期にも入ってるのかな。
とにかくみるみる変わってゆく街並がすごいです。
開発と共にいろんなものが失われてゆくのが
それもどうかなと思いますね。
  
宮古島の石庭という場所に初めて行きましたが
パワースポットとしてはものすごいんだろうなと思いました。
ボマルツォの庭的な郵便屋シュバルの理想宮みたいな不思議な庭でしたよ。

管理人 ズバリ、食べ飽きない沖縄料理はなんでしょう?
  
洞口依子さん 
そばですかね。沖縄そば。
あとは豆腐ですね。沖縄の豆腐、大好物です。
ちゃんぷるーにしたり、汁に入れたり、いろいろおいしい。


管理人 今回新たに開拓した場所で、人に教えてあげてもいいところはありますか?

洞口依子さん 
新たに開拓した場所ですか?
うーん、あまりないけど、宮古島に行ったら是非 
石嶺豆腐さんで朝一番の豆乳とゆし豆腐をごちそうになるといいかもしれない。
これは秘密にしときたかったけど、秘密にしなくてもいいよってお許しが出たので(笑)
是非、寄ってみるといいかもしれないです。
ただ、すごく当たり前のマナーが守れない人はどうかな。
これはどこに行くのにも言えるけど。

 
管理人 沖縄も島や地域によって、住んでいる人の気質が違う、と聞きます。依子さんが感じるものはありますか?

洞口依子さん 
それぞれありますよね。
本島でも南と北は違うし離島もそれぞれ異なった表情があります。
こと、宮古島は違うって感じがわかるかも。
宮古はパワーがすごい。人もどこか熱いです。熱心というのかな。
よそものを受け入れるのが苦手な島もあると聞きますかから。

管理人  ちょっと抽象的な質問です。
こんなに依子さんが沖縄に惹かれるのは、依子さんの中にあるものと共鳴しあうからですか、
それとも、依子さんの持っていないものがそこにあるからですか?

洞口依子さん 
よくわからないから、通い詰めるのかもしれないです。
なにごとにおいてもそうなんですが、わからないものが好きな傾向があります。
以前、香港がそうだったのですが、イギリス植民地時代が終わって、魔法がとけたように感じました。
あの1997年の返還の瞬間に香港にいましたが、なんかしんみりしましたね。
沖縄は復帰後に思い入れがある。
なぜだかわからない。
そのなぜを問うことなく、なんとなくやられてるのかもしれないです。
実はあまり好きな島ではありませんでしたからね。
だからよけいになぜ今自分が沖縄なのかが不思議です。
  
管理人 沖縄にいるとき、自分はストレンジャーであるという気持ちは、どこかに感じますか?

洞口依子さん 
あはは。どうだろう。
沖縄にかぎるものじゃないんじゃないかな。
ただ、すごくうちなんちゅーという意識が強いから、よそ者的な気分にぶちあたる時はあるけど
東京に生まれ育つと、どこに行ってもよそ者的じゃないのかな。
ここもはたして、って思うしね。
ただ、彼らはよそ者を受け入れる器が大きい。
アタシはそう思う。うまいんだよね。
あれは島という場所がそうさせるんだろうね。
島にはいろんなよそ者が流れてくるからね。
 
 管理人 依子さんは、よく沖縄の緩さを魅力として挙げられてます。
 あまりに緩い空気や人間関係には耐えられないようなことは感じませんか?

洞口依子さん 
ケースバイケースでしょう。
都会に生きていたって、やだなって思う都会人特有の気質はあるし。
そういう意味で、アタシはあまり差を感じません。
むしろうらやましいと思うことはある。
彼らはDIY精神が溢れてる。
今回、餃子を皮から作る会をやったときも、道具なんかなくても
知恵を絞り出して作ることを楽しんでいた。
めん棒がなきゃ、箸でもいい、ショットグラスでもいい
それぞれが工夫をこらして、あるもので作りあげてゆく。
だけど、食にはこだわった人たちだから
絶対に必要な黄金比率は心得てる。
まぁ狭い島なんで、人間間の色々はあるようだけど
助け合って生きる「ゆいまーる」ということや「もあい」などが盛んなのもわかるような気がしますね。
緩いってことは土地の持つきびしい状況がわかってるからってのもあるのかもね。
実際、うつ病やアル中が多いという話もなんとなくうなずけます。
 
管理人 最初の頃、エキゾチックな興味で沖縄に惹かれるものがあったでしょうが、それは今でもありますか?
 仮にそれが薄れたとしてもなお引き付けるものは、なんでしょう?

洞口依子さん 
ありますね。
アタシはクレオールなものが好きなのかもしれない。
異文化が混沌としている土地が好きなのかも。
植民地がそうだし、ミックスされるものがおもしろかったりするとわくわくする。
ちゃんぷるー文化と沖縄を言うけれど、 アメリカと沖縄が混ざっているのがおもしろいのに 
最近、東京のどこかや湘南のそれと変わらないのが哀しい。

沖縄に行けばわかるので、是非行ってみてね。
旅はいいですよ。なるべくひとりね。
団体で行ってもひとりで夜歩くとか、ひとりで歩くのがいい。


むかし、ビートルズが『リヴォルヴァー』の革命的なレコーディングを実行していた頃、
インタビュアーに「クリスマスにほしいものは、なぁに?」と訊かれたジョージが、
「そうだな、くだらん質問に5分おきに答えてくれるオウムがほしいな」
と答えたことがあります。

私も相当にお里が知れるようなことばかり訊いてしまいましたが、
いまの依子さんにはオウムは必要ないようです。
後半のちょっと意地の悪い質問も、みごとにスコ〜ンと突き抜けていきました。
それだけ、いま、オープンな気持ちを満喫されているんだなぁと嬉しくなりました!
 

  
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