「師走の昼の夢・ビフォア・クリスマス」
(2007/12/2 「メレカリキマカ2007 大人の文化祭」 恵比寿ガーデンホール )



前世紀の終わりくらいからウクレレの音を耳にする機会が増えて、
おそらくウクレレ人口も増えているのだろうとはいえ、
まぁみなさん、
ヒトの一生でこれだけ半径100m以内にウクレレの音色が溢れ返っていることというのは、
めったにありません。

恵比寿ガーデンプレイスへの長い遊歩道を抜けると、そこはハワイだった。
だって、本当に高木ブーさんが歩いてらっしゃるんですよ!(後述)
受付があって、このイベントの主催元であるPOEPOE(関口和之さんが「校長」を務めるハワイ関連のワークショップ)
関係者のかたが立っているのですが、みなさん、アロハシャツかTシャツ姿。
会場にも、首にレイをかけたムームー姿の女性多し。

「メレカリキマカ」って、ハワイ語で「メリー・クリスマス!」なんだそうです。
そのままロビーを見回すとですね、ウクレレ工房の出店ブース、ウクレレ教則本のブース、
ハワイ語教室が出店するTシャツ販売のブース、リボンレイのブースにチャリティー抽選のブースと、
10ばかし並んでいるのですが、全員、常夏モードの出で立ち。
そして、こうした人たちの多くが、ウクレレを片手にそこらじゅうで爪弾いているのです。

ウクレレの音って不思議です。
こんなに混ざっても、雑音にならない。
空気に吸い込まれていって、押しつけがましくない。
それでいて、耳に残る。

私もヘタの横好きで多少かじったことはありますが、久しぶりにウクレリアン・ハートに火がついて、
すぐさまチャリティー抽選のブースへ赴きました。
ここは、ウクレレをはじめハワイ関連の出品物が並んでおり、一枚200円でクジを買って半券に名前を書き、
欲しいグッズの前にある箱に入れておくと、のちほど抽選会で当たる、かもしれないよ、というコーナー。
外れても、投じたお金は、世界でワクチンを必要としている子供たちのために寄金されます。
早速、微々たる額ですが参加し、とにかくライオン・ウクレレの一点買いで勝負。
結果を言っちゃいますけど、はずれました。クジ運きわめて弱いです。

そんなこんなで、ぶらぶら見ているうちに、いつの間にか画伯が来てブースを設置中。


この日パイティティが出品するのは、CD、ステッカー(新作アリ)、それにパイティティTシャツ。
このシャツは、白地に黒フォントとシンプルで、旅客機をあしらったセンスのいいもの。
「お〜、かわいいですね。いくらですか?」と財布を取り出すと、
「あ、値段つけなきゃならないのか!」
さすがアーティストです。自身の作品に自分で値段がつけられない。
かなり悩んでいる様子。
ものすごく安い値段へ話が行きそうだったので
「画伯、あんまり安いと、逆に購買欲をそそりませんよ」
「そうだねぇ。じゃ、1800円!」
かくて、最初の客となり、その場で着ることにしました。

「パイティティ8年、ウクレレ100年、ロック誕生50年」…スパイダースか!


ステージではフラやウクレレ、スラックキー・ギター、それに口笛(!)などなど、
生徒さんたちの発表が行われています。
こうしてまとめていろいろ見ていると、ハワイアンって、いい曲多いですねぇ!
日本人の心の琴線をくすぐるような旋律が多いし、ブルージーだし、泣きもあるし。
今まであんまりちゃんと聴いたことなかったので、音楽ファンとして興味がわきました。

新鮮で良かったのは名古屋教室の人たち。
30人くらいいたんでしょうか。
ビーチボーイズでもおなじみの「スループ・ジョンB」をウクレレの合奏とコーラスで演奏。
ちゃんとハーモニーもまじえて健闘しました!

みなさんそうですが、ウクレレを大人数で一斉に弾くと、まず自分の音なんてわかりません。
仮にひとりずつピックアップがあっても、難しいでしょう。
なのにこの日、じつに多くの生徒さんたちがスタンドマイクで頑張っていて。
思わず「負けるな!自分を信じろ!仲間を信じろ!」と熱くなってしまいました。

それにしても、気分は本当に文化祭、です。
「夏休みのある小学校時代に帰りたい」と切実なことを歌ったのはミスチルですが、
さすがに小学校時代と同じ発見や喪失のある夏休みにはもう戻れない。
だけども、文化祭なら、こうやって開ける。
これ、いいですね!
後夜祭、なんか出会いがあったりしてね!
ガーデンプレイスの校門のとこで、あの子が待ってたら、どうする?何を言ってる。
冗談はともかく、大人のあこがれは、文化祭と見守ってくれる先生、だったりして。
そういうことかも知れません。

まったりした微笑気分でロビーに戻ると、ちょうどファルコン氏と本日のサポート・ベーシスト、「小林少年」が登場。


ややあって、薫さんと洞口依子さんも登場。
 

この頃にはロビーにも、まったりを通り越して、のほほんとした空気が横溢。
またウクレレの音がそれに拍車をかける…
とにかく今日来てよかったのは、大好きなウクレレのサウンドにとにかくここまで囲まれて、
もちろんそれ以上にウクレレを愛する人たちに囲まれて、ひたすらリラックスした気分で過ごせたこと。
ストレス解消になりました!!
これはなんと言うのかな、「のほほんの術」とでも言いましょうか、
こういう雰囲気に切り替えるすべを知っているのは、いいですね。
ピース、ピース。

ちょっと私もブースに入って店番していると、隣でウクレレを爪弾いている依子さんの目が輝き、ある人を呼びとめます。
高木ブーさんです。
ちょっとはにかみながらも、「よかったら聞いてください」とパイティティのCDを差し出すヨーリー。
へーっ、とジャケットを眺めるブーさん。まさに神様。
アリガトウ、の仕種でCDを小脇に立ち去るブーさんのお姿を目で追うと、
あたりまえですが、パイティティのCDを持った高木ブーさん、なのですね。
ものすごく、いいもの見た気分になりました!

また、しばらく後にブースの前を通った男性は、小倉久寛さん。
ここでも依子さんのアプローチ作戦。
小倉さんはちょっと意外そうな表情を浮かべながら、TVなどでおなじみのあの照れたような笑顔を返して
パイティティCD片手に移動されました。

 

この日、パイティティはゲスト出演者のひと組で、
関口校長とIWAOさん、ALANI OHANA BANDなどの熟練、凄腕のパフォーマーはもちろん、
「神様」高木ブーさんとも(短いですが)「対バン」の形となりました。

本日のパイティティは5人体制です。
演奏したのは「パリのアベック」「Icecream Blues」「ボナペティ!」の3曲。
私がファルコンに漏らした感想に、
(すみませんまたロックファン限定の譬えです!)「ストーンズで言えば『スティル・ライフ』!」
てのがあるんですが、サポートを極力排して、コアなメンツのみでソリッドに迫る!という意味です。
この日のパイティティは、デロリでのあの気の向くまま、酒の入るまま、といったノリとはまた違っていて、
とても集中力の高い簡潔でシャープな演奏を聞かせてくれたと思います。
まぁやはり、デロリでダラリというのはアリだとしても、初めてのお客さんが圧倒的に多い「対バン」。
しかもホール規模での演奏。
ひょっとして、いい具合に緊張感もあったんじゃないでしょうか。
あ、あと、時間が押してたというのも大きいか。
画伯が冗談をとばす暇がなかった、と。





よかったのは「Icecream Blues」ですね。
もう、イントロのファルコン=スライドが、音が鋭く切れるし、ホール内をスコーンと抜ける。
で、私の近くにいた女の子が、息をのむ音が聞こえました。
ちなみに、その女性たちは、メンバー紹介でファルコンの名前が呼ばれると、
「え?カレ、日本人?」などと囁きあっていたし。
ま、悪いけど、彼女たちのルックスまでは確認しなかったけど。
また、この日のベースを担当した小林クンはアップライトのアコースティック・ベースを弾くのですが、
「Icecream Blues」では弓弾きでなかなかシブい効果をあげていたし、
なによりアップテンポの曲での地響きみたいな重低音は心地いい。
とくにこういう広いホールでの場合、クラシカルな音のほうが耳に自然に響くのかな。

とにかく、こうしてハワイアン〜ウクレレの流れのなかで聴くと圧倒的にロックなパイティティですが、
うれしかったのは、会場の雰囲気が非常に好意的で温かかったこと。
これはステージからはわかりにくかったみたいですけど、空気がバンドに惹きつけられていました。
とくに「Icecream Blues」の出来が、よかったんですね。
あとで撮ったムービーを見返すと、あの曲のイントロ、スライドが鳴り終わった瞬間に、
依子さんが満面の笑みを浮かべている。
そういう無防備な、無心に音楽を演奏して、無心に感動する喜びが、ちゃんと伝わったと思いますね。
最後の曲では、客席から自然発生に手拍子が飛び出したし、

だからですね、
こういう他流試合とか道場破りなどを、もっとやったらいいと思います。
ジャグバンドとか、ウェスタン・スウィングとか、けっこういると思うんですが。
むかし、J・ガイルズ・バンド時代のピーター・ウルフは、
「ファンは、かっさらって来るもんだぜ」と豪語したとかしなかったとか。

この日、パイティティブースでCDがけっこう売れたみたいで、
とくに出番が終わったあと、ブースが賑わってました。

 
私、お買い上げのかたといろいろお話したのですが、
中には、POEPOEの生徒さんで、ウクレレへの興味からパイティティにたどりつき、
そこから洞口依子さんがメンバーだと知ってビックリし、『子宮会議』を読んでみた、
とおっしゃるかたもいらしたんですよ。

ここで、百戦の兵のメンバーの中、依子さんのウクレレ演奏で私が好きなところを。
独奏でビートルズや「虹のかなたへ」を弾いているとき、
あ、依子さんは、一人で弾いていても頭の中でバンドが鳴ってる!と直感し、
それがなんだか嬉しかったのですが、どうでしょう。
譜面を再現するより、バンドで転がっていきたいという気持ち、かなりたくさんお持ちではないですか?
ギターを持ったら、依子さんなら相当カッコいいリズム・ギタリストになると思います。
リズム・ギターって、カッコいいっすよぉ。私がストーンズ・ファンだから言うのかもしれないけど。
なぜか洞口依子さんには、「ミュージシャン」という言葉よりも「バンドマン」という言葉のほうが似合うような気がします。

パイティティ、アルバム制作とともに、次のステップを大きく踏み出してください。
パイティティはクレイジー・ダイアモンドですよ。
シャイン・オン!

(パイティティ・メンバーの写真については洞口依子様に、写真内で握手されているかたにはご本人様に掲載許可を得ました。ご快諾にお礼申し上げます)


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