『マヌケ先生(TV版)』(1998)

大林宣彦監督が「総監督」にあたっていますが、内藤忠司監督作品です。
内藤監督はもと大林監督の助監督の経歴があります。

中国放送が制作し、1998年1月24日に74分の作品としてTV放映されていますが、
劇場公開が最初から意図されていたらしく、そちらはこちらより20分長い版。
劇場公開は2000年。

大林監督の『あの夏の日 とんでろじいちゃん』へ連なる作品として考えてもいい内容で、
終戦前後の尾道を舞台に、活動写真に魅せられた男の子が、最初のアニメーション作品をつくって
(自宅にみんなを呼んで)公開するストーリーを、彼が成長した姿の映画監督(三浦友和さん。最初気づかなかった)の
無意識の心の旅という形で描いた好編です。

依子さんの役名は「おなご先生」。小学校の先生です。
見ていないかたのために、登場シーンは書きませんが、書きたいなぁ。
見たかたは、なぜ書きたくなるか、わかりますよね?
ヨーリー・マニア的には、「おいしい」出方なんですよねぇ。
『ニンゲン合格』での登場シーンが好きなかたなら、大喜びですね。
こういうの、もっとあってほしい気もします。依子さんは登場シーンで、いつも災難に遭う、というような。
ま、ただでさえ災難に遭う役が多いから、いいか。

おなご先生、丸いメガネをかけて、いつもの依子さんの色香は、外見では封じてあります。
ただ、要所要所で、ニマニマさせてくれる場面が待っています。
2番目の出演場面は、畑(かな?)の周りを砂煙をあげて走り回るシーン。
そのまま教室での場面につながって、「蛇はカーブを曲がるとき、迂回します。
だから蛇に追いかけられたら、カーブを直角に曲がって離しましょう」という、よくわからない授業。
私はここが好きで、ここでの依子さんは、とってもチャーミングだと思いますね。

その次、まだあるんですよね。主人公の男の子が手作りのアニメーションを「上映」する場面。
彼の自宅に大勢のご近所や級友が集まるのですが、おなご先生も、真ん中に座っています。
これもうれしい。「あ!見つけた!」という単純な喜びです。

そういう視点で見た場合、もちろん、依子さんがたくさん出ているとうれしいけど、この映画くらいの分量(!)は、
けっこう「味わえる」のではないかと思います。
私には、監督というものが、俳優ひとりひとりの適当な出演分量というものまで考えるものなのか、わかりませんが、
この映画での配分は文句なし、とくに上映会のシーンで姿が見えるあたりは、ウマい!とさえ思っちゃいます。

心に残ったセリフを。
「好きなことに本気でうちこめば、かならず、神様が筋道を作ってくださる」
あえて言われるまでもないことなんだけど、言われるとハッとしますね。もちろん、作品のパワーです。


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