『響子』(1996年)

向田邦子さんの原作を、久世光彦さんが田中裕子さん主演で演出されたドラマです。
1996年の1月6日放送、とDVDのパッケージにあります。
3が日のあととは言え、お正月からこんな色っぽいドラマを!

太平洋戦争前、石屋さんの一家を舞台にした物語ということで、どうしても私のようなオッサンは
『寺内貫太郎一家』を思い出だしてしまいます。
ちなみに、一家の女主人に加藤治子さん、音楽が小林亜星さんです。

依子さんの役は次女、信子。田中さん演ずる響子の妹で、回想形式のナレーションも担当されています。
で、おかあさんは先述のとおり加藤さんでしょう。
おじいちゃんが森繁久弥さん。
職人に小林薫さん。
おじいちゃんの愛人だった女に吉行和子さん。
ほかにも、藤田敏八監督、柳ユーレイさん、金久美子さん(・・・!)、筒井康隆さんなどなど。
右を向いたら加藤さん、左を向いたら森繁さん、背後に吉行さん、隣にいるのも田中さん、って…
依子さん、今さらながら、お疲れサマでした!

「石部金吉」って、色気のない人のことを言いますが、このドラマでは、石とその手触り(そして歯ごたえ)が、
非常に官能的なモチーフとして繰り返し使われます。 ホント、色っぽいドラマです。

見る前は、田中裕子さんと依子さんの姉妹なんて、ちょっと「ワケあり」感が濃すぎなんじゃ?と思っていました。
でも、そうじゃなかった。
依子さん演ずる信子は、この濃厚な大人のドラマの中にあって、唯一ひと息つけるオアシスのような存在。
「ビルヂング」の中の会社でタイピストとして働くのを夢見る女の子で、恋愛もあとくされがない。
彼女の存在が、見ている私たちにとって、通風孔のような役割をはたしてくれます。

これ、96年のドラマなんですよね。
たいへん失礼ですが、なんでこんなに可愛いのでしょうか。
おそらく、この依子さんを見たほとんどのファンは、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』の秋子がいる!と思うことでしょう。
この時代のちゃんとした家の娘さんらしく、カーディガンを羽織ったり。ハッピも着てたな。
あ、あったかそうな丹前に、正月らしく晴れ着も!
Yoollymaniaは必見です。

もうひとつ、なぜこの役が秋子を連想させたかというと、
ここでの信子という女の子も、周囲の大人の世界に対して、ストレンジャーなのですね。
秋子ほど、「迷い込んだ」わけではないし、「深入り」もしていないのですが。

お薦めです。

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