『怪人くいしんぼ』(1996)

これは再放送の機会があったらぜひ見ていただきたいドラマですね。
1996年4月27日放送の『土曜ワイド劇場』。黒土三男監督の作品です。

どこがおすすめかというと、全編これ、ヨーリー・ポイントだらけなのですね。
とにかく、めっちゃ可愛いんです。
洞口依子さんをこういうシチュエーションで見てみたい、という願望を絵にしてくれる。
俺が撮ったんちゃうかと思うくらい。

たとえば、割烹料理屋のカウンターで夫の佐藤B作さんとカワハギに舌鼓を打つ場面。
ここは非常に重要なシーンなのですが、カウンターの奥に用意された予約席に夫婦腰かけ、
そこで夫の薀蓄を聞きながら楽しく食べて飲んでいる姿に、どうしても焦点がいってしまう。

あるいは、事件の手がかりを追って別府の町を夫婦で歩き回る場面。
疲れた依子さんが「おなか空いた」というと、しょうがないな、と旦那がおんぶして、
ふたり線路の上を歩いていくんですが、なぜかエヘンエヘンと咳払いしたくなるくらい、ナイスないちゃつきです。

まだありますよ。オープニング、コンビニに篭城した犯人を追いつめる場面。
依子さんの役は刑事なのですが、突入前に十字をきる姿。
で、先輩に「クリスチャンか?」と問われ、「いえ、ただのおまじないです」と答えるところ。
このへんになってくると、非ヨーリー・マニアには奥の細道すぎるかもしれませんが、「いい」のです。

朝、B作旦那が起こしにくる場面。
旦那は料理で人気の喫茶店を切り盛りしており、かなりの食通で料理自慢。
今日の朝食はどこどこのこれと、あれと…と枕もとで叫んで、二度寝したがる依子さんを起こそうとします。
依子さんは布団をかぶって抵抗を試みますが、食欲が勝ったのでしょうか、旦那が立ち去ったあと、
ひょこっと顔を出す。そのときのボサボサの頭。
このへんになってくると、自分でも、ちょっとあぶないかな、と思いますが。

筋をなにも解説しませんでしたが、佐藤慶、加藤茶、鷲尾真知子、奥野敦士、上田耕一、各氏がとってもうまいし、
キャスティングの魅力と語り口の軽快さがピッタリ合っていて楽しめる一編です。音楽もエノケンだし。
加トちゃんの軽さがまた色っぽくて。
B作&加トちゃんの露天風呂シーンでは、思わず、湯煙が晴れるとババァばっかり、というオチを期待してしまいました。

加トちゃんが、「あんな美人の嫁さんがいるなんて…」というセリフがあるんですが、
ホントだコノヤロウ、と思いましたね。
つまり、それだけ依子さんの魅力が出た作品ということなのでしょう。

依子さんは、影のある役を演じる姿が私の初期設定になっているので、ついそこを強調して書いちゃいますが、
こういう巧まざる可愛さも、好きです。
そして、いまでもそれがあるし、最近とみに、新しい輝きが加わったように思います。

1996/4/27 21:00〜22:54
テレビ朝日 「土曜ワイド劇場」枠にて放送 
 
演出 黒土 三男 
脚本 黒土 三男


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