I'm Your Fan! 

洞口依子さんのファンにインタビューするコーナーです。


依子さんについて、たのしくおしゃべりできればいいな、と思ってはじめました。
鼎談でもそれ以上の数でもいいと思います。

ほかのファンのかたとお会いできる機会は限られるので、かなりの不定期更新は覚悟のうえ。

たまには依子さんにも猫だけでなく肴にもなってもらわなくちゃ。
(依子さんへのインタビューなどは、
こちら からどうぞ)


第7回 さゆりさん & すずさん

 


「洞口さんには、世代を超えて突き刺さってくるものがあります」
「映画の国の人ですね」
(2009年12月12日 神戸にて)


急遽きまった「鼎談」です。 
このコーナーの第2回に出ていただいたさゆりさんと、そのお友達のすずさん。
留学先の台湾で知り合われたそうです。

それぞれ兵庫、大阪にお住まいながら、渋谷での『洞口依子映画祭』に参加されました。
お2人とも20代前半と非常に若く、その感じ方や見方などに、
私にはないものがあるなぁと羨ましささえおぼえます。

第6回でのしのぶさんのお話と合わせると、
『洞口依子映画祭』をまた違った角度から見ることができるのではないでしょうか。
ひとつの出来事を、参加した複数の組の視点で。
そんな、『羅生門』か『ナッシュヴィル』かってな効果をねらったわけではないですが(笑)、
なんとなく、ナッシュヴィルを目指して旅をする女の子を思い出しました。

冬の午後、神戸の街。
森の小動物のようなお2人と「洞口依子が・・・」などと語り合う私は、
単なる変なおじさんでした。


洞口日和、今日は神戸元町からお送りしております…

さゆりさん 「(笑)・・・『タモリ倶楽部』みたいですね」

(笑)え〜、今日は鼎談ということで、まず2回目のご登場となります、さゆりさん。 大阪生まれの兵庫在住。

さゆりさん 
「はい。 2回目です…(消え入りそうな声で)ごめんなさい。」

なぜ謝る(笑)。  そして、そのお友達で、ご一緒に洞口依子映画祭に参加された、すずさん。 生まれも育ちも大阪。

すずさん 
「はい、よろしくお願いします!」

お二人あわせて、ぼくの今の年齢と5つしか変わらない!

すずさん 「そうなんですか?」
さゆりさん
 
「博士は年齢不詳ですよね…」

(笑)えぇと、すずさんは、GSのファンとうかがってますが?

すずさん 「はい。加橋かつみさんのファンなんです」
(加橋かつみ: グループサウンズの雄、ザ・タイガースでジュリーと人気を二分していたミュージシャン。 愛称「トッポ」。
「花の首飾り」「廃墟の鳩」の美声リードヴォーカルは彼。 芸術家っぽいイメージや反逆児的な言動などでも知られた)

タイガースのトッポですか! じゃ、パリで録音したレコードとか聴いたんですか?

すずさん 「はい。あと、オックスの赤松愛さんとか好きで」
(赤松愛: グループサウンズの人気グループ、オックスのオルガン奏者。 男性。
ブライアン・ジョーンズばりに前髪をおろし、中性的な魅力で、ヴォーカルの野口ひでとと人気を二分した。
オックスはステージでメンバーが「失神」し、客席の女の子も伝染して「失神」することで話題を呼んだ)

…ぼくの年代でも知らない人が多い名前ですけど。

さゆりさん 「変なコでしょう?」

はは。 お二人で『洞口依子映画祭』に行こうと思い立ったのは?

さゆりさん 「すずさんからメールがあったんですよ。 『大阪の映画館に洞口依子映画祭のチラシがあったよ』って。
『え〜なにそれ、知らんかった!』って見たら、やくしまるえつこさんのイベントのあった直後でした」


すずさん 「『洞口依子映画祭』!『まるえつ』!って二人で大騒ぎしたんですよ」

あ、やくしまるえつこさんとのイベントは見れなかったんですね。 あれは見てほしかったなぁ。

さゆりさん 「見たかったです…やくしまるまるえつこさんと洞口さんが同じステージに立ったんでしょう?」

もう「失神もの」でしたよ。 オックスのコンサートですよ。

すずさん 「あはははは!」
さゆりさん
 「相対性理論の曲を演奏したんでしょう?」

えぇ。 「地獄先生」も「LOVEずっきゅん」も。 緊張感があるかと思えば、絶妙に脱力してたりで、振り回されました!
すずさんは、洞口依子さんの印象は?

すずさん 「黒沢清監督の映画が好きで、カッコイイ女優さんやなぁと思ってました。
もう、雲の上の人ですね。 日本に住んでるのも信じられない。 
コートダジュールとかモロッコとかにでも住んでそうな、そんなイメージでした。
日本人離れして、同じ国に生きていることさえ思いもよらない。
さゆりさんがファンだと聞いて、あ〜、いいよね〜!カッコイイよね〜!って話になりました」


さゆりさんの前回のお話も、とっても楽しかったんですよ。

すずさん 「ファン対談に彼女が出ているのを読んで、びっくりしました。 ちゃんと人とお話できるやんか!って」

さゆりさんは、インタビューに出てくれた事とかは、言わなかったの?

さゆりさん 
「はい…なんか照れ臭くて」
すずさん 「(さゆりさんに)あんまり自分のことはしゃべらへんよね?」
さゆりさん 「…うん。苦手かも。」

じゃ、悪いことしたねぇ。

さゆりさん 「(笑)いえ、あれはすごくすごくすごく楽しかったです…はい。
でも、わたしはしゃべるの下手やから」

そんな発言の後に聞きにくいな…東京行きのお話をうかがいたいんですが。

さゆりさん 「はい。 黒沢清監督とのイベントは絶対行きたかったんです。
………あのぅ、前に見た『ドレミファ娘』、時間がたってからじわじわと、効いてきて
…なんか、あのラスト、あの子守歌のところが…忘れられんようになったんですね。………」


すずさん 「ちょっと(しゃべりの)間が多過ぎるんとちゃうか?」
さゆりさん 「(失笑)」

いいのいいの(笑)。 持ち味、持ち味。

さゆりさん 「(苦笑しながら)あの、だいぶ前に、博士と映画館でばったりお会いしましたよね。
あのときお話したかったんですけど、『ドレミファ娘』のラストって、思い出すと泣けるんですよ」
すずさん 「悲しい映画じゃないけどね!」
さゆりさん 「うん…でもなんか、泣ける。 
洞口依子さんの歌が、思い出すとすごく泣けるんです…………
洞口さんって、近寄りがたい感じがあるじゃないですか…でも、それだけじゃなくて………
一人で立っている姿の、カッコイイのもあるんやけど、寂しさというか…両方が同じところから来ているような…
ごめんなさい、言葉が続かないです(笑)」

いやいや、すごくよくわかりますよ。 
で、二人で東京に行くことに決めて?

すずさん 「二人とも貧乏なんで、新幹線はムリ。 で、往復8000円くらいのバスのチケットがあったんですね」
さゆりさん 「お金持ってなかったんですよ。 往復のバス代と、映画代。一万円ちょっとずつくらいしかなかった」
すずさん 「東京に着く前に、カーテンを開けたら空がうっすら明るくなっていくんですね。 それを二人でボーッと見てました」

いいですねぇ、青春やねぇ! (女子二人、爆笑)いやいや、今はおかしいかもしれないけど
・・・そんな夜明けはぼくには二度と訪れないからねぇ!

さゆりさん 「(爆笑)で、渋谷に着いて、シネマヴェーラへの道がわからなくて交番に入ったら、
お巡りさんに逆にいろいろ聞かれて」
すずさん 「『円山町になんの用事?』とか(笑)」
さゆりさん 「家出やと思われた(笑)」

すずさん 「劇場に着いてエレベーターから降りたら、宮崎あおいさんのお花があって。 彼女はそれ見て泣くんですよ!」
さゆりさん 「…泣きました…」

なにかグッとくるものがありましたか。

さゆりさん 「はい。 それは、うーん、
(長い沈黙)もともと、洞口依子さんの事を知ったきっかけがあおいさんやったし…
(長い沈黙)洞口さんが25年も女優を続けて、映画祭っていうイベントがあるくらい凄い女優さんなんだと
…わたしはそのことがすごく尊敬できることやと、ほんまにすごいなと最近思うようになって。
…そんなことを思うようになってきたから、うれしかったんですね、あのお花が。
ああ、ダメですね、支離滅裂!」
 
そんなことないですよ、とっても素敵な言葉ですし、まっすぐに胸に届きますよ。

すずさん 「私らから見たとき、洞口依子さんのように、すごく独自の個性で…他にいないじゃないですか…、
いろんなユニークな監督さんたちの映画に出て、ずっと自分の道を歩まれてる、
あんな女優さんの存在というのかな、やっぱり憧れというか仰ぎ見る気持ちがあるんですよ。
その気持ちをあのお花を見たときに、それでよかったんや!と安心したというか…ほらやっぱり!っていうか」

さゆりさん 「…うん…『ほらやっぱり!』、そのとおりです」
すずさん 「あの映画祭のパンフ・・・タダで申しわけないくらい素晴らしいあのパンフ。 
あの中に、いろんなかたのコメントがあるでしょう? あれを読むとさらにその『やっぱり!』が強まって・・・」

あ!旅の途中で自分の方角を確認できたっていう感じですか。
 
すずさん 「そうですね!それそれ。 私もそれは嬉しかったです」
さゆりさん 「…うれしかった…青いですかね?」

「あおい」? あ、「青い」か。 それは青いという人もいるかもしれないけど、すごく綺麗なブルーですよね。
若いあなたたちが、お金もないのに東京までやって来る、
それはすごいリスペクトだなぁと意外な気がしたんですけど、そういう気持ちがあったんですね。
 
すずさん 「リスペクト…それはあるんですけど、リスペクトというほどには、洞口さんのことは何も知らないです。
…でも、遥か上の存在なんだけど、洞口さんを観てると、グサッと突き刺さるものがあって、
それは世代とかあまり関係ないように思うんです。 時代とか世代とかを超えた、なにかグサッとくるものがあります


自分に繋がることとして、感じさせるものが多いですか?

すずさん 「同じ世界と言ったら怒られるかもしれませんが、古くならない何かを直に感じますね」

さゆりさんも、前にそういうようなことをコメントしてましたよね。
その「何か」っていうのは、言葉にはなりにくいものですか?

すずさん 「そうですねぇ。 う〜ん、なんやろな・・・難しいです。 たぶん、自分の深いところを揺さぶられる感じ? う〜ん、なんでしょね?」

さゆりさん 黒沢さんとのトークのとき、洞口さんの笑顔がすごく素敵だったんです。
『あの頃はよかった』的な笑顔というか雰囲気だけなら、私たちにはちょっとついていけなかったかもしれません。
でも、今の洞口さんが輝いていて、現在進行形で、やっぱりグサッと来る魅力なのが最高でした」
すずさん
 「黒沢さんが…素敵でしたね!黒沢さんの映画みたいに」

さゆりさんは、暉峻さんの登場に拍手したとか?

さゆりさん 「(笑)そりゃしますよ〜、『テルオカくん』登場!超サプライズ。 喋り方が『テルオカくん』と同じだし!」

すずさん 「私は(その日上映された)『CURE』も『ドレミファ娘』もDVDで見たことがあったんですけど、
洞口さんは、映画館で観るとまるでちがいますよね! 石井監督の『山のあなた』に出たときもそう思いました」

そうですね。『山のあなた』のときも、かなりインパクトありましたね。

すずさん 「ロビーで、もうほんとに目と鼻の距離のところに洞口さんがいはったんですね。 なんて美しい人だろうと」
さゆりさん 「肩が細いんですよね。 で、その細さがカッコイイんですよ〜」
すずさん 「なんか、ファンの男性にサインしてはって。 この人があの洞口依子さんなんやぁって思うくらいで、とても話しかけれませんでした」
さゆりさん 「思ってたよりもずっと気さくな感じもしたんですけど、オーラが、カリスマ性が、やっぱりコートダジュール!!」

(笑)ただただ眺めていた、と。
 
すずさん 「日本映画のスター、って感じじゃなかったですね。フランスとかでもない」
さゆりさん 「映画の国や…ね」

映画の国。映画の国の人、って感じがしましたか。

さゆりさん 「…わたし、また変なこと言いました?」

いや、さゆりさん、いいこと言う! タイトルに使わせてもらいますね。 
じゃ、このへんで…え?なになに?

さゆりさん 「あのぅ、私からも質問するっていうのは、アリですか?」

あら。 はい、なんでしょうか。 これ、恒例になるのかなぁ…

さゆりさん 「逆インタ(笑)。 あの…博士は、最初に『ドレミファ娘』をご覧になったとき、どう思われたんですか?
やっぱり、『すごい!』と思われましたか?」

本当に逆インタビューですねぇ(笑) 
いや、なにもわかりませんでしたね。 わけがわからなかった。 でも、強烈に惹かれました。
あなたたちみたいに、ちゃんとした言葉で語るなんてできなかったですよ。 
頭をガツンと殴られたみたいというか、とにかく、「あの娘は、なに?」。

すずさん 「最初から洞口さんのことだったんですね(笑)」

と言いますか・・・作品と洞口依子さんを切り離して考えられなかったんだと思います。
「あの娘は、なに?」イコール、「この映画は、なに?」。 
ある監督/脚本家のかたで、あの映画とも繋がりのあるかたが僕におっしゃったのは、
「やっと僕たちのやりたい事を理解してくれる女の子が現れたと思った。 しかも美少女だった」ということなんですよ。
それ、わかるような気がします。 単なる観客でガキだったぼくが言えるセリフではないんですけど。
こんな感じで、よろしいでしょうか(笑)

さゆりさん 「はい。 今のをタイトルにしたほうがいいと思いますよ」

いやいや、私なんか、まだまだです・・・今日は年末のお忙しいなか、本当にありがとうございました!


いや〜「鼎談」は難しい! なんてことを私が言ったら怒られますね。 
お相手のお2人はもっと困られていたんじゃないかと思います。
でも、今回は、さゆりさんが今まで何度かお会いしたことがあったのと、
すずさんがそのお友達で、お2人の「にこいち」な空気に場がかなり救われたこともあり、
とても楽しくお話できたように思います。
ちょっと必要以上に「若者」扱いしてしまったかな、という反省があるんですが、
東京道中のなにげない描写を聞くと、やっぱり頬がゆるんでしまうんですよね。

最後はまたまた逆襲されてしまいましたが、こういう「質問される」感覚を忘れないようにしたいです。

さゆりさん、すずさん、どうもありがとうございました!


 


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