I'm Your Fan! 

洞口依子さんのファンにインタビューするコーナーです。


依子さんについて、たのしくおしゃべりできればいいな、と思ってはじめました。
鼎談でもそれ以上の数でもいいと思います。

ほかのファンのかたとお会いできる機会は限られるので、かなりの不定期更新は覚悟のうえ。

たまには依子さんにも猫だけでなく肴にもなってもらわなくちゃ。
(依子さんへのインタビューなどは、
こちら からどうぞ)


第2回 さゆりさん
 


「単純にわかる魅力じゃないですね。でも、わかったら、本当に好きになってしまう・・・」
(2009年1月29日 梅田にて)


1986年生まれの大学生で、
『ドレミファ娘の血は騒ぐ』公開の翌年に生まれたさゆりさんは、
最近、兵庫県から京都の映画館まで駆けつけて、
オールナイトであの作品を観たばかりだそうです。
「オールナイトで観た2本と『地獄先生』しか知らない私が”ファン”だなんて、おこがましいです」
と恐縮されるのを、
そういう人が今しか言えないことがあるから、とお願いしてしまいました。
台湾留学を目前に控えてのお忙しいなか、すみませんでした。

年の差の醸しだすやり取りが面白いので、なるべくまとめずに載せてみます。

 

さゆりさん ホンマに、洞口依子さんのこと、知らないんですよ。いいんでしょうか。こんな私が答えて。
『ドレミファ娘』の公開された年には、まだ生まれてなかったんで、なにも語れない…

『ドレミファ娘』と『ニンゲン合格』に「地獄先生」のPVを観てれば、じゅうぶんですよ。(笑)

さゆりさん 中学の頃、不登校だったんですよ(笑)。ある事情で、急に引きこもりみたいになってたんですけど、
あるバンドの音楽に衝撃を受けて、とりあえずCD屋とライヴには出かけれるようになったんですね(笑)。


すごい進歩です。なんていうバンドだったんです?

さゆりさん ミッシェル・ガン・エレファントっていう・・・

あぁ!あれが中学生のとき!あれに中学で出逢ったら、ちょっとすごいですよね!

さゆりさん もう、天地がひっくりかえるくらいの衝撃で(笑) 
それで、ミッシェルの音楽が使われてる映画があるんです。『青い春』っていう。あれを観に行って。

豊田利晃監督の。屋上で手を叩くやつ。

さゆりさん そう!それで、ここでもまた衝撃を受けて。こんな世界があったのか!ってなって。
新井浩文さんのファンになったんです。
学校には行くようになったんですけど、あいかわらず家ではビデオで映画ばかり観てる子だったんですよ。

どんなのを観てたんです?

さゆりさん 『ユリイカ』とか・・・青山真治監督の・・・あ、宮崎あおいが好きなんですよ。

あ、そういえば、雰囲気似てますね。

さゆりさん (笑)似てません! わたし、あんな手足長くないです。かわいくないです。
で、青山さんもあおいさんも、「洞口依子」という人が好きらしいことがわかって。
どんな人やろ?って、そのときは普通に興味持ったくらいなんですけど。

そしたら、黒沢清という監督がいるらしいこともわかってきて。
でもなんか、検索したら最初に「ポルノ」ってのが必ず出てくるんで(笑)、
これは自分には関係ない世界やな、と思って、スルーしてしまって。
 でも、そこにも「洞口依子」って名前があるんですよね。「ドレミファ娘の血は騒ぐ」というタイトルと。
それから少し間があいて、『回路』とか黒沢さんの映画も観るようになったんですけど、
「ポルノ」という言葉がひっかかって、『ドレミファ』は観てなかった。

わたし、中川翔子ちゃんも好きなんですけど、しょこたんの友達に小明(あかり)ってライターの子がいるんです。
その子のブログでも「洞口依子さん大好き」みたいなことが書いてあって。やっぱり「ドレミファ娘」って書いてあって。
いよいよこれは、なにか、出会わなアカンのかな、と(笑)

周囲を少しずつ固められたみたいな感じですね。「洞口依子」って言葉に。

さゆりさん そう。そしたら、京都の映画館で上映されるって聞いて・・・行きました。
『ドレミファ娘の血は騒ぐ』ってタイトルに、なんかアピールするものがあったんですよ。
最初は・・・ちがうタイトル、だったんですよ、ね?

『女子大生恥ずかしゼミナール』。

さゆりさん あ〜、それやったら、ちょっと(笑) やっぱり『ドレミファ娘の血は騒ぐ』ですよね。

で、ご覧になって、どう思われたんですか?

さゆりさん う〜ん、う〜ん・・・よくわからんかった、かな?(笑) 
じつは、今日お話するんで、レンタルで見直したんですよ。そしたら、少しわかった。
でも、変な映画ですよね。

どういうところが気になりました?

さゆりさん (長い沈黙)・・・あの、教授が暗い部屋の中で、固まったまんま後ずさりするとことか、ちょっとイマイチかな、と。
ゴメンナサイ!これ読む人、怒らはりますよね!

いいんですいいんです。あなたの意見なんですから、それが大切です。

さゆりさん ほかにも、あの、学生が無表情でしゃべる感じとか、なんか古いと思いました。
でも、あの映画の洞口依子さんはヤバイですよ。あれ、何歳のときですか?

撮影時で19歳ですね。

さゆりさん え〜!天才的な可愛さですよね。
観てて思ったんですけど、けっこう学生のファッションが、古いんですね。
・・・洞口さんのも古いはずなんですけど、ぜんぜん古いと感じないんですよ。
・・・古い/新しいとちがって、なんか、独特なんですよ。・・・服よりも洞口さん自身が可愛い。
洞口さんって、最近も、ワンピでも着こなすのが難しい色とかパターンとか、着はりますよね。
それが似合うし・・・似合うていうか・・・服が洞口さんに着てもらって輝いてる・・・すごいです。
ごめんなさい・・・偉そうに。

いえいえ、感動して聞きほれてしまいました。
僕なんかは、あの学生のように、ジャケット着てネクタイして大学行ってたんで、客観的に見れないんです。恥ずかしくなる。

さゆりさん え〜!じゃ、ホンマにあんなファッションだったんですか?男の子も

上着はDCブランドの(笑)ロゴ入りのスタジャンかジャケット。冬になると、くるぶしまである黒のコートを羽織って(爆笑)。

さゆりさん え?じゃ、あのレコード貸してあげるよ、ってナンパしにくる男の子も?

あのテルオカくんは、さすがにちょっと「頑張りすぎ」やけど、あのくらい頑張ってる人もいましたよ。

さゆりさん (感心したように)おもしろい時代やったんですねぇ。 

今の大学生は、ちがいますか?

さゆりさん (考えて)ダラダラしてるところは同じやと思うんですけど・・・(『ドレミファ娘』の)あの学生たちは、
もっとこう・・・能天気というか・・・ほんまに何も考えてないように見える。就活とか・・・

(ここで「就活」を「リクルート」と呼んでいたことや、当時の景気など、現在とのちがいについて意見を交わすが、割愛)

さゆりさん さっき、洞口さん可愛いって言いましたけど、暗い表情がいいですね。翳りがあって。
「最初のシーンの表情だけでも完璧」って、博士さん書いてはりましたよね。
わたしが男やったら、あの表情を見たら、やっぱり好きになってしまうと思う。

それと、どこか反抗的な感じがしたんですよ。それも、とってつけたような反抗じゃなくて、その人が人生で背負ってるような、
抵抗する精神というのかな、それがあの表情からビシビシ伝わってきたんですね。スクリーンから。

さゆりさん あぁ、わかる。そうですよね。わたしがいいなと思ったのもそういうところかもしれない。
笑顔も可愛いし、おしゃれだし、センスいいし、女の子から見てもうらやましいくらいなんだけど、
・・・じつは鋭いものを隠し持ってるというか・・・
う〜ん・・・うまく言えないですね。この魅力。

『ニンゲン合格』での洞口さんは、これとまたちがう、笑顔の魅力だと思うんですけど、
あの柔らかさも、中にピシッと筋が通ってそう。

(考え込んで)・・・単純にわかる魅力じゃないんですね。でも、わかったら、本当に好きになってしまう・・・

「地獄先生」のPVはどうですか?

さゆりさん  あれはもう、すんなりカッコイイ。

エロいですよね。

さゆりさん 「エロい」・・・うんうん、エロいけど、エロいというより色っぽいし・・・色っぽいというよりエロい・・・(笑)
むずかしいですね!単純に、こう!って言えないんです。不思議なカラーを持ってはる。
でも「地獄先生」は、かなりヤバイですよ。

いま、しゃべりながら考えてたことがあって、それは、最初にお話ししたミッシェル・ガン・エレファントのことなんですけど、
・・・変ないいかたですけど、ミッシェルのすごくヤバイ感じと洞口さんのヤバイ感じは、ワタシ的にはかぶるかも、ですね。
 
相対性理論のヤバ可愛い感じとは、どうですか?

さゆりさん (考えて)・・・あぁ!ほんまですねぇ!リンクしてますね!
可愛いのと、色っぽいのと、え〜と、殺伐としてるのと、一緒にあるんですね!

わ〜、なんか、『ドレミファ娘』、もう一回観なアカンわぁ。
でも、あれを十代で観はったんですよね?当時。 それは衝撃ですねぇ。
そういうの、めっちゃうらやましいです。わたしなんか、なんにもないから・・・


う〜ん、そうですねぇ、そうかもしれませんが・・・
でもさゆりさんには、ミッシェル・ガン・エレファントがあったじゃないですか。『ユリイカ』があったじゃないですか。
うらやましい。僕も中学生のときにミッシェルをガナりたかったですよ。
それは宝物だと思いますよ。誇りに思ってください。

さゆりさん 音楽とか、映画とかって、いいですよね。
世代は関係あるんでしょうけど・・・それを好きと思う気持ちでお話ができて。
こんなに素直に人と話せたのも久しぶりです。洞口依子さんに感謝せな(笑)


80年代に向ける視線やファッションから依子さんの魅力をつかまえるセンス、
とてもとても勉強になりました。
こうして記事にアップしながら、内気な中学生だった人が、
音楽に殻を破られて外に飛び出し、
今や電車で1時間以上かけてオールナイトに出かけ、
初対面の私とご自分の好きなことについてお話ししてくれるまでにいたる、
そっちの人生のほうが、映画以上に音楽以上に大切なものに溢れていると思いました。

台湾留学、気をつけて!
本当にありがとうございました!



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