『第一級殺人弁護(2) 被害者の妻と加害者の妻が争うビデオの秘密 法廷で暴く消しゴムのトリックは?』

2003年6月28日に『土曜ワイド劇場』として放映された、山本邦彦監督、吉田剛脚本の2時間サスペンス・ドラマです。
風間トオルさんが、地味で実直な弁護士を演ずるシリーズの第2弾でもあります。

依子さんの役は、レストランやいかがわしいバーを経営する女、英(はなぶさ)瑞江。
夜、シャッターの下りきった商店街を歩いてくる登場シーンからして、すでに「重要参考人」度、高し。
1軒の店に入って死体を発見し、悲鳴を上げるのがこのドラマ本筋の導入部になっています。

ここまでは、眉が艶っぽいなぁ、という程度の眼福感(そんな言葉、あるのか)でいいのですが、
ドラマが進行するにつれて、どんどんエスカレートいたします。

ある男が事故で不能になった、という話を聞いて、「(本当かどうか)試してみましょうか?」
と、軽く視聴者およびお茶の間をくすぐります。
お〜、そういう方向で行くのか、と心の準備ができたつもりでいると、
次はピンサロまがいの自分の経営店で、乗り込んできた風間トオル弁護士と不敵に渡り合います。
このドラマは全体にムダがなくてよくできていますが、とくにこの場面は「土ワイ」ならではの、
ベタで下世話な面白さに満ちており、依子さんもたっぷり見得をきって、食えない女を演じてくれます。

それからのちに、弁護士事務所に現れて、風間弁護士を丸め込もうとウマい話を持ちかける場面、
いよいよ彼女の影に犯罪の匂いが濃厚になってきて、キャラクターも、ハードボイルドの悪女に近くなっていきます。
映画『マルタの鷹』の女なんかを演じてもらいたいなぁ、とニヤニヤしていると、
物語は佳境に入ってゆき、この瑞江が左利きかどうか、という点が謎解きのカギとしてクローズ・アップされます。

そして裁判シーン。
彼女の利き手を試す実験がおこなわれます。
10人ほどの子供たちと並んで、文字を書いては消す、という行為を何度も繰り返させられます。
これがタイトルにある「法廷で暴く消しゴムのトリック」で、その是非はこのHPの趣旨からずれるので、問いません。

ただ、このシーンはちょっと邪(よこしま)なおもしろさを提供してくれます。
何度も文字を書いては消す、という行為を繰り返させられている依子さんが、やけに色っぽく映るのですね。
プライドの高い、強気でやり手のヒロインが、子供たちと机を並べられて、児戯のようなことを行わされているわけですが、
これを洞口依子さんが演じると、なぜか官能的なニュアンスというか匂いが加味されるのです。

自分のやっていることをコントロールできなくなってゆき、行為に自我が引きずられる姿に、奇妙な艶かしさを感じます。
ここにも、私は、『CUREキュア』の明子先生を投影してしまいました。
こういう歪んだ味わいを表現できる(してしまう?)女優さんは、洞口依子さん以外に考えられないですね。
もしくは、私のセンスがおかしいのでしょう。

2003年6月28日土曜日21:00〜22:54
テレビ朝日系列 「土曜ワイド劇場」枠にて放送
演出 山本邦彦監督
脚本 吉田剛


「この人を見よ!」へ戻る

←Home (「洞口日和」)