『相棒season1 第2話教授夫人とその愛人』
2002年10月16日放送(テレビ朝日系列)。

私の住んでる京都という街では、古都の景観を守る条例が厳しくて、
一定の高さ以上の建物を建ててはいけない地域があります。
なもんで、たまに大阪の街なんかに行ったら、高層ビルの群れがもの珍しい。田舎モノです。
で、用事先がビルの上層階だったりするときなんか、めったにない都会を見下ろす機会で、
レストランなんかでもわざわざ窓際に座ってみたりします。

ふとなにげなく外を見て、近くのビルの屋上から、今まさに洞口依子さんが飛び降りんとしていたら、
さぁ私はどうするか。
脱兎のごとく駆け出します。これは間違いない。
走って走って、全速力でビルの玄関へとびこむが、エレベーターが来ない。
迷わず、階段を使いますね。
走って走って、屋上のドアを蹴破って、姿がない!
南無…祈る思いで遥か地上をのぞきこむと…よかった、何事もなかった。

この「教授夫人とその愛人」は、まさにこんな具合に始まります。
走るのは寺脇康文さんです。
屋上のべつの場所でうずくまっていた放心状態の依子さんを保護します。

依子さんの役は、山本圭さん演じる大学教授の妻で、教授の女性問題で少し心を病んでいる、という設定。
彼女は、自分が男を殺したので自殺しようとした、と告白します。
ところが彼女のいう死体の姿はありません。

事件に乗り出すのが寺脇氏と上司の水谷豊さんのコンビ。
死体のない事件なんか立件できん、ともみ消そうとする上層部にさからって、この奇妙な事件を解決します。

自殺未遂、冷えきった夫婦関係、心を病む女、記憶障害…
まるで2時間サスペンスでの洞口依子像を1時間に凝縮させ、さらにそれを記号化したような役柄です。
ファンにとっては、よく知っている大好きな物語を、ダイジェストで見ているような感覚を味わえます。

教授夫人が家庭で家事をしたり、夫の不義に悩んでいる描写はありません。
悩んだり、不安に苛まれたりするところを描かず、事件が彼女の妄想だったのかどうか、謎をもたせてある。

依子さんって、非日常的な雰囲気をいつもどこか持っていて、それは「華」とはまたべつのような感じがします。
言葉をあてはめると、「虚ろさ」に近いんじゃないかと思うんですが。
このへん、突っ込んで考えると、なかなか面白い展開になるかもしれませんね。

依子さん、放心状態での受け答えがなんでこんなにサマになるんでしょうね。
「失神女優」ならぬ「放心女優」として、ピカイチですよね。

とにかく、この作品では、私たちのよく知っている洞口依子さんが、自動筆記状態で綴られていきます、
って、そんなシュールなもんじゃないですが。

2002年10月16日水曜日 21:00〜21:54
テレビ朝日系列にて放送

演出 麻生学
脚本 輿水 泰弘



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